本資料に掲載されている技術情報は一般的な特性を説明する為のもので、
これにより何らかの保証をするものではありませんので予めご了承ください。
【File No.FineInductionHeating-001】
析出硬化系シリコロイの局部高硬度化技術
Fine Induction Heating of Siicolloy
1.硬度と衝撃値(靭性)の関係
Data No.SLAX-SITR2006-2006111701
 一般的に鋼は硬度が上がると靭性が低下し、使用方法によっては注意を要します。また析出硬化系のステンレスは時効硬化熱処
で硬度を上げた場合、硬化深度は焼入鋼に比較すると深くなります。耐摩耗性には硬化深度が深い方が良いかもしれませんが、全
体に硬度が深く入ることにより、製品によっては靭性を損なう可能性があります。析出硬化系シリコロイはこのような場合に、高周波
熱処理(局部溶体化)を併用することで硬度と靭性のバランスをとることが可能です(注意:製品形状によります)。
2.精密高周波熱処理(局部溶体化)の一例
Data No.SLAX-SITR2006-2006111702
Data No.SLAX-SITR2006-2006111703
3.高周波熱処理を用いた製品例
 3.1 蒸気安全弁用弁棒
蒸気安全弁用弁棒(全体図)
蒸気安全弁用弁棒(先端拡大図)
● 先端部と摺動部分のみを高硬度化  ● 先端部のステライト肉盛を省略  ●全体の靭性を確保
Data No.SLA-NSTR2000-SHT-2006091001
 3.2 橋梁用支承ローラー
橋梁用支承(全体図) 橋梁用支承ローラー(ローラー部)
● ローラー表面のみを高硬度化   ●全体の靭性を確保
Data No.SLA-NSTR2000-SHO-2006091001

2. 精密高周波熱処理の工程例
@
シリコロイA2,シリコロイXVI
 素材状態ではシリコロイA2は高温時効処理(OAG)か溶体化熱処理(ST)、シリコロイXVIは溶体化熱処理が標準です。事前に高温時効処理が行われている場合は、ABの工程は省略します。また溶体化熱処理が行われている場合はAを省略します。また素材状態が分からない場合はAから実施します。
A

 溶体化の目的は加工性に富むマルテンサイトを得ることと、時効処理の準備をすることです。
 析出硬化系ステンレスを高温加熱後に急冷すると、時効硬化元素を固溶したマルテンサイトが得られ、このマルテンサイトは軟らかく加工できます。
 保持時間は肉厚に対して、1インチ1時間程度を実施することが多いです。
B  時効硬化熱処理のマスキング処理を行います。
時効硬化で高硬度化するのを防ぎます。
C  高温時効後の硬度はシリコロイA2はHRC35〜40前後、シリコロイXVIはHRC40前後となり、切削加工が可能です(プリハードン相当)。
D  高硬度化させる部分のみに高周波熱処理(局部溶体化熱処理)を行う。時効硬化は溶体化された部分のみに効果があります。
E  高周波熱処理後は多少のスケールが付着しますので、その除去や硬化深度の調整の意味で二次加工を行います。この場合、焼入とは異なり高硬度化していないので、比較的容易に加工できます。
F  高周波熱処理(溶体化熱処理)によって生成した析出硬化元素を過飽和に含有するマルテンサイトに、時効硬化熱処理によって金属間化合物を析出させ、硬さと強度を上昇させます。
 高硬度化のメカニズムは、溶体化によって無理に溶かしこまれた析出硬化元素が時効硬化熱処理により粒子分散強化し、結晶を歪ませ転位を動きにくくすることにあります。
 高温時効処理の部分は時効硬化による高硬度化はせず、靭性を確保できます。
【標準条件例】
 シリコロイA2:480℃×6h/AC
 シリコロイXVI:450℃×8〜10h/AC
G  時効処理により若干の寸法変化及び歪みが生じる可能性があり、特に精密部品では研磨加工等の最終仕上を行う例が多いです。
 また大気熱処理で時効処理を行う場合、研磨加工等で薄い酸化スケール(金色〜茶色)を除去する場合もあります。
Data No.SLAX-SITR2006-PR-2006111701
 <関連サイト>
■14.表面改質技術 14.1 特殊浸炭処理 14.2 低温窒化処理 14.3 表面改質の耐食性

◆ 本ページのキーワード
Material: シリコロイA2、シリコロイXVI
特  性: 加工、プロセス、熱処理
Technology: 高周波熱処理、高周波溶体化、時効硬化、マスキング

 <Site Map>
項目 サイト名
■1. シリコロイとは? 1.1 What’s Silicolloy? 1.2 析出硬化とは? 1.3 History
■2. 応用製品例 2.1 リップ・精密金型 2.2 連続鋳造用ローラー 2.3 製品例
■3. お問合せ先 3.1 Company Profile 3.2 サービス体制
■4. シリコロイA2(析出硬化系) 4.1 諸特性
  ◆トライボロジー 4.2 摩擦摩耗特性 4.3 耐焼付性
  ◆耐食性 4.4 耐食性(1) 4.5 耐食性(2) 4.6 耐孔食性
4.7 応力腐食割れ性
  ◆耐熱性 4.8 高温特性(1) 4.8 高温特性(2) 4.9 耐ヒートチェック特性
4.10 耐高温腐食性 4.11 温度と酸化増量の関係
  ◆熱処理特性 4.13 時効硬化熱処理特性 4.14 低温時効処理特性 4.15 溶体化熱処理特性
4.16 低温溶体化特性 4.17 再溶体化熱処理特性 4.18 SUS630との比較(1)
4.19 SUS630との比較(2)
  ◆プロセス技術 4.20 熱処理寸法変化 4.21 加工性 4.22 加工プロセス
4.23 局部高硬度化技術
■5. シリコロイXVI(析出硬化系) 5.1 諸特性 5.2 摩擦摩耗特性 5.3 耐焼付性
5.4 耐食性(1) 5.5 耐食性(2) 5.6 耐孔食性
5.7 熱処理寸法変化 5.8 溶体化熱処理特性 5.9 局部高硬度化技術
■6. シリコロイB2(2相系) 6.1 諸特性 6.2 耐食性(1) 6.4 シリコロイB2の耐食性
6.5 高温特性(1) 6.6 耐ヒートチェック特性 6.7 温度と酸化増量の関係
■7. シリコロイD(オーステナイト系) 7.1 諸特性 7.2 高温特性(1) 7.3 高温特性(2)
7.4 耐ヒートチェック特性 7.5 耐高温腐食性 7.6 温度と酸化増量の関係
7.7 耐食性(1) 7.8 耐孔食性
■8. SUS630(析出硬化系) 8.1 諸特性 8.2 SL-A2との比較(1) 8.3 SL-A2との比較(2)
8.4 摩擦摩耗特性 8.5 耐焼付性 8.6 耐食性(1)
8.7 耐食性(2) 8.8 耐孔食性 8.9 熱処理寸法変化
8.10 温度と酸化増量の関係 8.11 応力腐食割れ性
■9. SUS420J2(マルテンサイト系) 9.1 諸特性 9.2 耐食性(1) 9.3 耐孔食性
9.4 熱処理寸法変化 9.5 摩擦摩耗特性 9.6 応力腐食割れ性
■10. SUS440C(マルテンサイト系) 10.1 諸特性 10.2 耐食性(1) 10.3 耐食性(2)
10.4 耐孔食性 10.5 熱処理寸法変化 10.6 摩擦摩耗特性
【New】 2007.6.23 追加
■11. SUS304(オーステナイト系)
11.1 諸特性 11.2 耐食性(1) 11.3 耐食性(2)
11.4 耐孔食性 11.5 ステンレスの耐食性 11.6 摩擦摩耗特性
11.7 耐焼付性 11.8 摩擦摩耗特性(詳細版2)
【New】 2007.6.23 追加
■12. SUS316L(オーステナイト系)
12.1 諸特性 12.2 耐食性(1) 12.3 耐食性(2)
12.4 耐孔食性 12.5 ステンレスの耐食性 12.6 耐焼付性
■13.S55C-Normal(炭素鋼) 13.1 諸特性
■14.表面改質技術 14.1 特殊浸炭処理 14.2 低温窒化処理 14.3 表面改質の耐食性
【New】 2007.4.25 追加
■15.トライボロジー
   (摩擦摩耗特性)
15.1 摩擦摩耗特性(簡易版) 15.2 耐焼付性
15.3 摩擦摩耗特性(詳細版1) 15.4 摩擦摩耗特性(詳細版2) 15.5 摩擦摩耗特性(詳細版3)
15.6 摩擦摩耗特性(詳細版4) 15.7 摩擦摩耗特性(詳細版5)