本資料に掲載されている技術情報は一般的な特性を説明する為のもので、
これにより何らかの保証をするものではありませんので予めご了承ください。
【File No.OxidationResi-001】
シリコロイの高温腐食試験結果
1. 試験方法
 1.1 比較材質
(wt%)
材質 C Si Mn Cu Ni Cr Mo Nb Co Al W Fe
シリコロイA2 0.014 3.35 0.91 1.10 6.46 10.90 0.41 0.31 - - - 76.55
シリコロイD 0.016 3.88 1.08 - 14.18 17.70 0.98 - 1.31 - - 60.85
インコネル601 0.050 0.25 0.50 0.25 60.50 23.00 - - - 1.35 1.35 14.10
インコネル625 0.030 0.17 0.04 - 61.30 21.95 8.72 3.38 - - - 4.40
ハステロイC - - - - 57.00 16.50 17.00 - - - 4.50 5.00
Data No.SLAD-NSTR200006-SMT00152-2006091001
 1.2 試験方法
 焼却炉内に試験片を設置し一定期間稼動した後に取り外し、各材質の劣化状況を調査した。
  試験温度 :850℃
  試験時間 :
   シリコロイA2、シリコロイD : 1050時間
   インコネル601、インコネル625、ハステロイC : 350時間

2. 試験結果
  2.1 試験後の外観
  2.1.1 シリコロイA2、シリコロイD
材質:シリコロイA2、シリコロイD (長さ方向に縦に2分割した材料を溶接)
拡大写真
  2.1.2 インコネル601、インコネル625、ハステロイC
材質:インコネル601、インコネル625、ハステロイC (長さ方向に横に3分割した材料を溶接)
Data No.SLAD-NSTR200006-SMT00152-2006091001

  2.2 断面ミクロ組織観察結果
  2.2.1 シリコロイA2
シリコロイA2 @ シリコロイA2 A シリコロイA2 B
50倍 50倍 50倍
シリコロイA2 @ シリコロイA2 A シリコロイA2 B
400倍 400倍 400倍
スケール厚さ:70μm スケール厚さ:140μm スケール厚さ:200μm
母材変質厚さ:0μm 母材変質厚さ:25μm 母材変質厚さ:38μm
Data No.SLAD-NSTR200006-SMT00152-2006091001

  2.2.2 シリコロイD
シリコロイD @ シリコロイD A シリコロイD B
50倍 50倍 50倍
シリコロイD @ シリコロイD A シリコロイD B
400倍 400倍 400倍
スケール厚さ:12μm スケール厚さ:38μm スケール厚さ:70μm
母材変質厚さ:0μm 母材変質厚さ:20μm 母材変質厚さ:0μm
Data No.SLAD-NSTR200006-SMT00152-2006091001

  2.2.3 インコネル601
インコネル601 @ インコネル601 A
50倍 50倍
インコネル60 @ インコネル601 A
400倍 400倍
スケール厚さ:150μm スケール厚さ:200μm
母材変質厚さ:470μm 母材変質厚さ:500μm
Data No.SLAD-NSTR200006-SMT00152-2006091001

  2.2.4 インコネル625
インコネル625 @ インコネル625 A
50倍 50倍
インコネル625 @ インコネル625 A
400倍 400倍
スケール厚さ:25μm スケール厚さ:110μm
母材変質厚さ:125μm 母材変質厚さ:175μm
Data No.SLAD-NSTR200006-SMT00152-2006091001

  2.2.5 ハステロイC
ハステロイC @ ハステロイC A
50倍 50倍
ハステロイC @ ハステロイC A
400倍 400倍
スケール厚さ:50μm スケール厚さ:140μm
母材変質厚さ:38μm 母材変質厚さ:50μm
Data No.SLAD-NSTR200006-SMT00152-2006091001

  2.3 スケール厚さ、母材変質厚さ
Data No.SLAD-NSTR200006-SMT00152-2006091001

  2.4 EPMAによる面分析結果
材質 スケール部検出元素 母材変質部偏在元素
厚さ,μm 元素 厚さ,μm 元素
シリコロイA2 B 200 Ni Cr Si O S 38
シリコロイD B 70 Cr Si O Cl Al S 0 S
インコネル601 A 200 Ni Cr Fe O Al 500 Cr S O Al
インコネル625 A 110 Ni Cr Fe O Nb Mo 175 Cr O Al Nb
ハステロイC A 140 Ni Cr Fe O Mo 50 Cr S
Data No.SLAD-NSTR200006-SMT00152-2006091001
  2.4.1 シリコロイA2B
    スケール厚さ:200μm、母材変質厚さ:38μm
SEM 500倍 Ni Cr
Si O S
Data No.SLAD-NSTR200006-SMT00152-2006091001

  2.4.2 シリコロイDB
    スケール厚さ:70μm、母材変質厚さ:0μm
SEM 500倍 Cr Si
O Cl Al
S
Data No.SLAD-NSTR200006-SMT00152-2006091001

  2.4.3 インコネル601A
    スケール厚さ:200μm、母材変質厚さ:500μm
SEM 500倍 Ni Cr
Fe O Al
S
Data No.SLAD-NSTR200006-SMT00152-2006091001

  2.4.4 インコネル625A
    スケール厚さ:110μm、母材変質厚さ:175μm
SEM 500倍 Ni Cr
Fe O Nb
Mo Al
Data No.SLAD-NSTR200006-SMT00152-2006091001

  2.4.5 ハステロイCA
    スケール厚さ:140μm、母材変質厚さ:50μm
SEM 500倍 Ni Cr
Fe O Mo
S
Data No.SLAD-NSTR200006-SMT00152-2006091001
3. 考察
 (1)断面ミクロ組織観察結果より、シリコロイの高温腐食による劣化度はシリコロイA2よりもシリコロイDの方が少ないことが分かりま 
   す。またシリコロイDはインコネル601、インコネル625、ハステロイCよりも良好な結果となりました。
    (*試験時間 シリコロイA2シリコロイD:1050時間、インコネル601、インコネル625、ハステロイC:350時間)
 (2)EPMAによる面分析結果より、シリコロイと高合金の腐食の形態が異なることが分かります。
   インコネル601、インコネル625、ハステロイCはCr2O3皮膜の形成、インコネル601はAlの酸化皮膜の形成が考えられます。
   シリコロイA2、シリコロイDはCr2O3皮膜の下にSi系の皮膜形成によりCr2O3皮膜の剥離が容易に行われず、酸化を抑制している
   ものと推測されます。
   特にシリコロイDはオーステナイト系ステンレスであり、Siが多く含有されていること、また低炭素であることが有効に働いているも
   のと想定されます。また高温での合金元素の特徴を以下に示します。

   C : Cは400℃以上の高温環境下でCrと結合し、結晶粒界にCr炭化物を析出する。
   Cr : Crは腐食性の付着灰に対する溶解度の小さい保護的な酸化皮膜であるCr2O3てら合金表面に生成し、腐食性の付着灰か
       ら保護する作用がある。
   Si : Siは非晶質のFe2Si4、SiO2皮膜をCr2O3の下に形成しスケールの固着性を良くする関係上、酸化皮膜の剥離が容易に行
       われないため、高温酸化に有効である。
   Nb : Nbは炭化物を形成しやすく、合金中のCを固定してCr炭化物の析出を抑制し、高温強度の劣化を防ぐ作用がある。
 <関連サイト>
■7. シリコロイD(オーステナイト系) 7.1 諸特性 7.2 高温特性(1) 7.3 高温特性(2)
7.4 耐ヒートチェック特性 7.5 耐高温腐食性 7.6 温度と酸化増量の関係
7.7 耐食性(1) 7.8 耐孔食性

◆ 本ページのキーワード
Material: シリコロイA2、シリコロイD、インコネル601、インコネル625、ハステロイC
特  性: 高温腐食、高温酸化、外観、組織、EPMA、元素
Technology: Si、ケイ素、低炭素

 <Site Map>
項目 サイト名
■1. シリコロイとは? 1.1 What’s Silicolloy? 1.2 析出硬化とは? 1.3 History
■2. 応用製品例 2.1 リップ・精密金型 2.2 連続鋳造用ローラー 2.3 製品例
■3. お問合せ先 3.1 Company Profile 3.2 サービス体制
■4. シリコロイA2(析出硬化系) 4.1 諸特性
  ◆トライボロジー 4.2 摩擦摩耗特性 4.3 耐焼付性
  ◆耐食性 4.4 耐食性(1) 4.5 耐食性(2) 4.6 耐孔食性
4.7 応力腐食割れ性
  ◆耐熱性 4.8 高温特性(1) 4.8 高温特性(2) 4.9 耐ヒートチェック特性
4.10 耐高温腐食性 4.11 温度と酸化増量の関係
  ◆熱処理特性 4.13 時効硬化熱処理特性 4.14 低温時効処理特性 4.15 溶体化熱処理特性
4.16 低温溶体化特性 4.17 再溶体化熱処理特性 4.18 SUS630との比較(1)
4.19 SUS630との比較(2)
  ◆プロセス技術 4.20 熱処理寸法変化 4.21 加工性 4.22 加工プロセス
4.23 局部高硬度化技術
■5. シリコロイXVI(析出硬化系) 5.1 諸特性 5.2 摩擦摩耗特性 5.3 耐焼付性
5.4 耐食性(1) 5.5 耐食性(2) 5.6 耐孔食性
5.7 熱処理寸法変化 5.8 溶体化熱処理特性 5.9 局部高硬度化技術
■6. シリコロイB2(2相系) 6.1 諸特性 6.2 耐食性(1) 6.4 シリコロイB2の耐食性
6.5 高温特性(1) 6.6 耐ヒートチェック特性 6.7 温度と酸化増量の関係
■7. シリコロイD(オーステナイト系) 7.1 諸特性 7.2 高温特性(1) 7.3 高温特性(2)
7.4 耐ヒートチェック特性 7.5 耐高温腐食性 7.6 温度と酸化増量の関係
7.7 耐食性(1) 7.8 耐孔食性
■8. SUS630(析出硬化系) 8.1 諸特性 8.2 SL-A2との比較(1) 8.3 SL-A2との比較(2)
8.4 摩擦摩耗特性 8.5 耐焼付性 8.6 耐食性(1)
8.7 耐食性(2) 8.8 耐孔食性 8.9 熱処理寸法変化
8.10 温度と酸化増量の関係 8.11 応力腐食割れ性
■9. SUS420J2(マルテンサイト系) 9.1 諸特性 9.2 耐食性(1) 9.3 耐孔食性
9.4 熱処理寸法変化 9.5 摩擦摩耗特性 9.6 応力腐食割れ性
■10. SUS440C(マルテンサイト系) 10.1 諸特性 10.2 耐食性(1) 10.3 耐食性(2)
10.4 耐孔食性 10.5 熱処理寸法変化 10.6 摩擦摩耗特性
【New】 2007.6.23 追加
■11. SUS304(オーステナイト系)
11.1 諸特性 11.2 耐食性(1) 11.3 耐食性(2)
11.4 耐孔食性 11.5 ステンレスの耐食性 11.6 摩擦摩耗特性
11.7 耐焼付性 11.8 摩擦摩耗特性(詳細版2)
【New】 2007.6.23 追加
■12. SUS316L(オーステナイト系)
12.1 諸特性 12.2 耐食性(1) 12.3 耐食性(2)
12.4 耐孔食性 12.5 ステンレスの耐食性 12.6 耐焼付性
■13.S55C-Normal(炭素鋼) 13.1 諸特性
■14.表面改質技術 14.1 特殊浸炭処理 14.2 低温窒化処理 14.3 表面改質の耐食性
【New】 2007.4.25 追加
■15.トライボロジー
   (摩擦摩耗特性)
15.1 摩擦摩耗特性(簡易版) 15.2 耐焼付性
15.3 摩擦摩耗特性(詳細版1) 15.4 摩擦摩耗特性(詳細版2) 15.5 摩擦摩耗特性(詳細版3)
15.6 摩擦摩耗特性(詳細版4) 15.7 摩擦摩耗特性(詳細版5)