本資料に掲載されている技術情報は一般的な特性を説明する為のもので、
これにより何らかの保証をするものではありませんので予めご了承ください。
【File No.SLA2-001】
シリコロイA2 (析出硬化系ステンレス)
<高強度用鋼>
1. はじめに
 シリコロイA2は化学成分のひとつにSi(ケイ素)を多量に含有する析出硬化系ステンレスで、高強度、高硬度、耐食性、耐熱性、耐摩耗性、耐焼付き性をバランスよく兼ね備え、オールラウンド性を有します。
 析出硬化系ステンレスとしてはHRC50±2とSUS630以上の高硬度を有するのが特徴で、耐食性はオーステナイト系よりは劣りますが、マルテンサイト系、フェライト系より良好です。
 析出硬化系ステンレスは、焼入型と異なった熱処理プロセスで、比較的低温の熱処理で高硬度化するため、焼入鋼のような問題(熱処理歪み、寸法変化、焼き割れ、酸化スケールの付着など)が少なく、加工プロセス改善が可能です。
2. 化学成分
(wt%)
成 分 C Si Mn P S Cu Ni Cr Mo Nb Fe
規格 Max
0.020
3.00-
5.00
0.50-
1.50
Max
0.040
Max
0.030
0.80-
1.20
6.00-
7.00
10.00-
13.00
0.30-
1.00
0.30-
1.00
Bal.
成績例 0.014 3.35 0.91 0.021 0.018 1.10 6.46 10.90 0.41 0.31
Data No.SLA-TSTR2006-MS-2006091001 *化学成分は一例です
3. 物理的性質
材 質 密度 線膨張係数 , ×10-6(1/℃) 熱伝導率 透磁率
シリコロイA2 g/cm3 20〜100℃ 20〜300℃ 20〜500℃ W/mK 4.278
7.60 12.5 12.9 13.7 25.5
Data No.SLA-TSTR2006-2006091001
Data No.SLABD-NSTR199408-SMT94309S-2006091001
4. 縦弾性係数(ヤング率)
材質 熱処理 縦弾性係数,GPa
シリコロイA2 ST 1050℃/WQ 183
AG 480℃/AC 199
シリコロイXVI ST 1050℃/WQ 188
AG 450℃/AC 202
Data No.SLAX-SITR200604-MK-2006091001
5. 機械的性質
材 質 熱処理 引張強度 耐力 伸び 絞り 硬度 シャルピー衝撃値
記号 温度 N/mm2 N/mm2 HRC J/cm2
シリコロイA2 ST 950〜1050℃/WQ 1100 850 12 67 35 160
H900 490℃×4h/AC 1700 1600 35 52
OAG 650℃×4h/AC 1200 900 19 61 37 120
H1025 550℃×4h/AC 1550 1350 9 43 47 9
H1075 580℃×4h/AC 1400 1100 12 48 42 13
H1150 620℃×4h/AC 1300 1050 15 54 40 58
Data No.SLA-TSTR200311-DSA4004b-2006091001 *機械的性質は一例です
**通常の熱処理はST,H900,OAGのいずれかで使用します。H1025,H1075,H1150はSUS630に合わせた参考値です。
6. 顕微鏡組織と金属間化合物
溶体化熱処理 時効硬化熱処理 溶体化熱処理 時効硬化熱処理
(1050℃/WQ) (480℃/AC) (1050℃/WQ) (480℃/AC)
顕微鏡組織 (200倍) 金属間化合物 (5000倍)
低炭素マルテンサイトのマトリックス Nb-Si系の金属間化合物
Data No.SLA-NSTR2000-2006091001 Data No.SLAX-NSTR2000-KTR-2006091001

7 耐食性
 7.1 各腐食液に対する耐食性
材 質 熱処理 腐食度 ,×10-3g/m2・sec
5%HCl 5%H2SO4 5%HNO3 10%CH3COOH 塩化第二鉄
シリコロイA2 ST 3.25 130.00 5.760 0.25 7.33
H900 8.23 240.00 1.210 0.11 3.96
SUS630 ST 13.57 47.00 0.017 0.00 4.45
H900 8.00 59.00 0.053 0.00 2.95
SUS304L ST 10.37 16.53 0.050 0.40 2.21
シリコロイB2 ST 7.72 1.42 0.01 0.00 0.93
シリコロイD ST 11.88 2.69 0.09 0.00 0.24
塩化第二鉄を除く腐食試験:Boil 6h、塩化第二鉄腐食試験:RT 24h
Data No.SLABD-TSTR1995B-2006091001 *本データは一例です
 7.2 孔食電位 , 塩水噴霧試験結果
材 質 熱処理 孔食電位 , mV 塩水噴霧 , 5%NaCl , 308K
3.5%NaCl , 303K 96h 500h
シリコロイA2 ST 260 微少錆発生 発錆
H900 120 発錆 発錆
SUS630 ST 150 発錆なし 発錆なし
H900 100 発錆なし 発錆なし
SUS304L ST 320 発錆なし 微少錆発生
シリコロイB2 ST 330 発錆なし 微少錆発生
シリコロイD ST 320 微少錆発生 微少錆発生
Data No.SLABD-TSTR1995B-2006091001 *本データは一例です
 7.3 硬度と孔食電位の関係
Data No.SLABDX-SITR2006-2006091001
 7.4 塩水噴霧試験(応力負荷環境)
シリコロイA2
(時効硬化熱処理)
SUS420J2
(焼入・焼戻し)
19,000kg/cm2の応力負荷環境にて、500時間塩水噴霧を行った結果
Data No.SLA-NSTR197802-OIU-2006091001

8 時効硬化熱処理温度と機械的性質の関係
 8.1 硬度と時効温度の関係
熱処理:1050℃/WQ , 試験片:JIS14号
Data No.SLA-TSTR200311-DSA4004b-2006091001
 8.2 引張強度と時効温度の関係
熱処理:1050℃/WQ,試験片:JIS14号
Data No.SLA-TSTR200311-DSA4004b-2006091001
 8.3 伸び,絞りと時効温度の関係
熱処理:1050℃/WQ , 試験片:JIS14号
Data No.SLA-TSTR200311-DSA4004b-2006091001
 8.4 衝撃値と時効温度の関係
熱処理:1050℃/WQ , 試験片:JISZ2202(Uノッチ)
Data No.SLA-TSTR200311-DSA4004b-2006091001
 <関連サイト>
■4. シリコロイA2(析出硬化系) 4.1 諸特性
  ◆トライボロジー 4.2 摩擦摩耗特性 4.3 耐焼付性
  ◆耐食性 4.4 耐食性(1) 4.5 耐食性(2) 4.6 耐孔食性
4.7 応力腐食割れ性
  ◆耐熱性 4.8 高温特性(1) 4.8 高温特性(2) 4.9 耐ヒートチェック特性
4.10 耐高温腐食性 4.11 温度と酸化増量の関係
  ◆熱処理特性 4.13 時効硬化熱処理特性 4.14 低温時効処理特性 4.15 溶体化熱処理特性
4.16 低温溶体化特性 4.17 再溶体化熱処理特性 4.18 SUS630との比較(1)
4.19 SUS630との比較(2)
  ◆プロセス技術 4.20 熱処理寸法変化 4.21 加工性 4.22 加工プロセス
4.23 局部高硬度化技術

◆ 本ページのキーワード
Material :シリコロイA2、シリコロイXVI、シリコロイB2、シリコロイD、SUS630、SUS304、SUS316L、SUS420J2、SUS440C
特  性 :化学成分、物理的性質、ヤング率、機械的性質、顕微鏡組織、耐食性
Technology :時効硬化熱処理

 <Site Map>
項目 サイト名
■1. シリコロイとは? 1.1 What’s Silicolloy? 1.2 析出硬化とは? 1.3 History
■2. 応用製品例 2.1 リップ・精密金型 2.2 連続鋳造用ローラー 2.3 製品例
■3. お問合せ先 3.1 Company Profile 3.2 サービス体制
■4. シリコロイA2(析出硬化系) 4.1 諸特性
  ◆トライボロジー 4.2 摩擦摩耗特性 4.3 耐焼付性
  ◆耐食性 4.4 耐食性(1) 4.5 耐食性(2) 4.6 耐孔食性
4.7 応力腐食割れ性
  ◆耐熱性 4.8 高温特性(1) 4.8 高温特性(2) 4.9 耐ヒートチェック特性
4.10 耐高温腐食性 4.11 温度と酸化増量の関係
  ◆熱処理特性 4.13 時効硬化熱処理特性 4.14 低温時効処理特性 4.15 溶体化熱処理特性
4.16 低温溶体化特性 4.17 再溶体化熱処理特性 4.18 SUS630との比較(1)
4.19 SUS630との比較(2)
  ◆プロセス技術 4.20 熱処理寸法変化 4.21 加工性 4.22 加工プロセス
4.23 局部高硬度化技術
■5. シリコロイXVI(析出硬化系) 5.1 諸特性 5.2 摩擦摩耗特性 5.3 耐焼付性
5.4 耐食性(1) 5.5 耐食性(2) 5.6 耐孔食性
5.7 熱処理寸法変化 5.8 溶体化熱処理特性 5.9 局部高硬度化技術
■6. シリコロイB2(2相系) 6.1 諸特性 6.2 耐食性(1) 6.4 シリコロイB2の耐食性
6.5 高温特性(1) 6.6 耐ヒートチェック特性 6.7 温度と酸化増量の関係
■7. シリコロイD(オーステナイト系) 7.1 諸特性 7.2 高温特性(1) 7.3 高温特性(2)
7.4 耐ヒートチェック特性 7.5 耐高温腐食性 7.6 温度と酸化増量の関係
7.7 耐食性(1) 7.8 耐孔食性
■8. SUS630(析出硬化系) 8.1 諸特性 8.2 SL-A2との比較(1) 8.3 SL-A2との比較(2)
8.4 摩擦摩耗特性 8.5 耐焼付性 8.6 耐食性(1)
8.7 耐食性(2) 8.8 耐孔食性 8.9 熱処理寸法変化
8.10 温度と酸化増量の関係 8.11 応力腐食割れ性
■9. SUS420J2(マルテンサイト系) 9.1 諸特性 9.2 耐食性(1) 9.3 耐孔食性
9.4 熱処理寸法変化 9.5 摩擦摩耗特性 9.6 応力腐食割れ性
■10. SUS440C(マルテンサイト系) 10.1 諸特性 10.2 耐食性(1) 10.3 耐食性(2)
10.4 耐孔食性 10.5 熱処理寸法変化 10.6 摩擦摩耗特性
【New】 2007.6.23 追加
■11. SUS304(オーステナイト系)
11.1 諸特性 11.2 耐食性(1) 11.3 耐食性(2)
11.4 耐孔食性 11.5 ステンレスの耐食性 11.6 摩擦摩耗特性
11.7 耐焼付性 11.8 摩擦摩耗特性(詳細版2)
【New】 2007.6.23 追加
■12. SUS316L(オーステナイト系)
12.1 諸特性 12.2 耐食性(1) 12.3 耐食性(2)
12.4 耐孔食性 12.5 ステンレスの耐食性 12.6 耐焼付性
■13.S55C-Normal(炭素鋼) 13.1 諸特性
■14.表面改質技術 14.1 特殊浸炭処理 14.2 低温窒化処理 14.3 表面改質の耐食性
【New】 2007.4.25 追加
■15.トライボロジー
   (摩擦摩耗特性)
15.1 摩擦摩耗特性(簡易版) 15.2 耐焼付性
15.3 摩擦摩耗特性(詳細版1) 15.4 摩擦摩耗特性(詳細版2) 15.5 摩擦摩耗特性(詳細版3)
15.6 摩擦摩耗特性(詳細版4) 15.7 摩擦摩耗特性(詳細版5)