本資料に掲載されている技術情報は一般的な特性を説明する為のもので、
これにより何らかの保証をするものではありませんので予めご了承ください。
【File No.Trybology-001】
析出硬化系シリコロイのトライボロジー特性
1 摩擦摩耗特性(ピンオンディスク)
  ピンオンディスク型摩擦摩耗試験機を用い、摩擦力と摩耗量を測定した結果です。比摩耗量は質量減少法により算出し、各材
質の組み合わせの総合比摩耗量の比較を行った。ここでいう総合比摩耗量はピンの比摩耗量とディスクの比摩耗量を足したもの
である。以下、シリコロイA2はSL-A2、シリコロイXVIはSL-XVIと称す。
 1.1 ピンオンディスク型摩擦摩耗試験機
Data No.SLAX-SITR200608-TRI-2006091001
 1.2 試験片の硬度
材質 硬度,HV
表面 中心部
SUS304 195
SUS440C 685
SUS420J2 574
SUS630 449
SL-A2 568
SL-XVI 686
SL-A2(C) 1055 584
SL-XVI(C) 988 648
SL-A2(N) 1212 589
SL-XVI(N) 1293 689
* (C):特殊浸炭処理、(N):低温窒化処理
Data No.SLAX-SITR200608-TRI-2006091001
 1.3 試験条件
ピンオンディスク試験の条件
潤滑 無し
試験温度 室温
荷重 , N 4.9 (500g)
回転数 , rpm 400
摩擦速度 , m/min 12.6
摩擦時間 , s 600
Data No.SLAX-SITR200608-TRI-2006091001
 1.4 ディスクをSUS440Cとした場合の総合比摩耗量
 ステンレスの中で最も硬度が高いマルテンサイト系ステンレスのSUS440Cをディスクとした場合の各材質の総合比摩耗量の比
較です。シリコロイXVIはほとんど摩耗が発生せず、次いでシリコロイA2の総合比摩耗量が少ない。
Data No.SLAX-SITR200608-TRI-2006091001
 1.5 ディスクをSUS304とした場合の総合比摩耗量
 ステンレスの中で一般的によく使用されるオーステナイト系ステンレスのSUS304をディスクとした場合の、各材質の総合比摩耗
量の比較です。シリコロイA2、シリコロイXVIの総合比摩耗量は析出硬化系ステンレスのSUS630よりは良好であるが、マルテン
サイト系ステンレスのSUS420J2、SUS440Cが最も少ない結果となった。しかしSUS440Cは試験時間が355秒で摩擦係数がリミット
の3.0を越えため、試験を中断した。SUS304をディスクとした場合の傾向は各材質ともにディスク側の比摩耗量が多い。またディス
クの摩耗痕は部分的に加工硬化(HV420〜600)しており、いびつな形状や凝着摩耗の状態を呈する。
*SUS440Cは試験中に摩擦係数がリミットの3.0を越えたため、試験を中断した。
Data No.SLAX-SITR200608-TRI-2006091001
 1.6 ディスクをピンと同種金属とした場合の総合比摩耗量
 ピンとディスクの材質を同種金属とした場合の各材質の総合比摩耗量の比較です。異種金属と比較すると各材質の総合比摩
耗量は全体的に大きい傾向で、特に析出硬化系の総合比摩耗量が大きい。しかし摩擦係数は大きいものの、シリコロイA2、シリ
コロイXVIの摩擦係数のバラツキ(3σ)は0.28〜0.29とSUS440Cの同種金属の0.22に次ぎ、低いことが特徴的です。
参考までにSUS304は0.596、SUS630は0.377とバラツキ(3σ)が大きい。
(詳細は1.8 摩擦摩耗試験の組み合わせと試験結果を参照)
Data No.SLAX-SITR200608-TRI-2006091001
 1.7 表面改質の効果
 析出硬化系シリコロイに表面改質を応用した場合の各材質の総合比摩耗量の比較です。ピンがシリコロイA2(C)、ディスクが
シリコロイA2(C)の場合はほとんど摩耗が見られず、またピンがシリコロイXVI(C)、ディスクがシリコロイXVI(C)の場合も総合
比摩耗量が非常に少ない結果となった。析出硬化系シリコロイの同種金属の組み合わせの総合比摩耗量が特殊浸炭処理の相
乗効果で急激に減少している。また低温窒化処理も有効であること、相手材の組み合わせの依存性が高いことが分かる。
* (C):特殊浸炭処理、(N):低温窒化処理
Data No.SLAX-SITR200608-TRI-2006091001
 1.8 摩擦摩耗試験の組み合わせと試験結果
 摩擦係数と総合比摩耗量の相関はほとんど見られないこと、ステンレスの摩擦摩耗特性としては相手材との組み合わせ依存
性が高いこと、材質の組み合わせが同じであっても回転側、固定側が異なると結果が大幅に異なることが分かる。
分類 ピン ディスク 摩擦係数 総合比摩耗量
Ave Max バラツキ(3σ) ×10-14 , m2/N
SUS440C SL-XVI SUS440C 0.520 0.723 0.371 0.0000000
SL-A2 SUS440C 0.623 0.903 0.409 6.3636570
SUS440C SUS440C 0.629 0.778 0.216 14.8485331
SUS304 SUS440C 0.435 0.662 0.300 20.5677692
SUS630 SUS440C 0.675 0.889 0.359 29.6970662
SUS304 SUS440C SUS304 0.654 3.000 0.804 0.0000000
SUS420J2 SUS304 0.485 1.128 0.605 2.1074627
SL-A2 SUS304 0.535 1.176 0.543 26.7380999
SL-XVI SUS304 0.501 1.272 0.554 39.3476211
SUS630 SUS304 0.637 1.490 0.524 61.8146279
SUS304 SUS304 0.667 1.971 0.596 71.9871920
同種金属 SUS440C SUS440C 0.629 0.778 0.216 14.8485331
SUS304 SUS304 0.667 1.971 0.596 71.9871920
SUS420J2 SUS420J2 0.797 1.230 0.320 73.7611955
SL-XVI SL-XVI 0.773 1.040 0.275 125.3155190
SL-A2 SL-A2 0.778 1.050 0.286 183.8650311
SUS630 SUS630 0.866 1.660 0.377 293.1437202
表面改質 SL-A2(C) SL-A2(C) 0.650 0.884 0.510 0.0000000
SL-XVI(C) SL-XVI(C) 0.631 0.839 0.342 2.1239918
SL-A2(C) SL-XVI(C) 0.702 0.912 0.414 4.2479837
SL-A2(C) SUS304 0.439 1.116 0.582 6.2515193
SL-A2(N) SL-XVI(N) 0.623 0.846 0.343 6.3719755
SL-A2(N) SUS304 0.738 1.091 0.280 37.0219845
SL-XVI(C) SL-XVI 0.788 1.302 0.288 67.9677391
* (C):特殊浸炭処理、(N):低温窒化処理
Data No.SLAX-SITR200608-TRI-2006091001
 <関連サイト>
【New】 2007.4.25 追加
■15.トライボロジー
   (摩擦摩耗特性)
13.1 摩擦摩耗特性(簡易版) 13.2 耐焼付性
13.3 摩擦摩耗特性(詳細版1) 13.4 摩擦摩耗特性(詳細版2) 13.5 摩擦摩耗特性(詳細版3)
13.6 摩擦摩耗特性(詳細版4) 13.7 摩擦摩耗特性(詳細版5)

◆ 本ページのキーワード
Material :シリコロイA2、シリコロイXVI、SUS630、SUS304、SUS420J2、SUS440C
特  性 :トライボロジー、摩擦摩耗特性、比摩耗量、摩擦係数、摩擦係数のバラツキ
Technology :析出硬化、時効硬化、金属間化合物、表面改質、特殊浸炭処理、低温窒化処理

<Site Map>
項目 サイト名
■1. シリコロイとは? 1.1 What’s Silicolloy? 1.2 析出硬化とは? 1.3 History
■2. 応用製品例 2.1 リップ・精密金型 2.2 連続鋳造用ローラー 2.3 製品例
■3. お問合せ先 3.1 Company Profile 3.2 サービス体制
■4. シリコロイA2(析出硬化系) 4.1 諸特性
  ◆トライボロジー 4.2 摩擦摩耗特性 4.3 耐焼付性
  ◆耐食性 4.4 耐食性(1) 4.5 耐食性(2) 4.6 耐孔食性
4.7 応力腐食割れ性
  ◆耐熱性 4.8 高温特性(1) 4.8 高温特性(2) 4.9 耐ヒートチェック特性
4.10 耐高温腐食性 4.11 温度と酸化増量の関係
  ◆熱処理特性 4.13 時効硬化熱処理特性 4.14 低温時効処理特性 4.15 溶体化熱処理特性
4.16 低温溶体化特性 4.17 再溶体化熱処理特性 4.18 SUS630との比較(1)
4.19 SUS630との比較(2)
  ◆プロセス技術 4.20 熱処理寸法変化 4.21 加工性 4.22 加工プロセス
4.23 局部高硬度化技術
■5. シリコロイXVI(析出硬化系) 5.1 諸特性 5.2 摩擦摩耗特性 5.3 耐焼付性
5.4 耐食性(1) 5.5 耐食性(2) 5.6 耐孔食性
5.7 熱処理寸法変化 5.8 溶体化熱処理特性 5.9 局部高硬度化技術
■6. シリコロイB2(2相系) 6.1 諸特性 6.2 耐食性(1) 6.4 シリコロイB2の耐食性
6.5 高温特性(1) 6.6 耐ヒートチェック特性 6.7 温度と酸化増量の関係
■7. シリコロイD(オーステナイト系) 7.1 諸特性 7.2 高温特性(1) 7.3 高温特性(2)
7.4 耐ヒートチェック特性 7.5 耐高温腐食性 7.6 温度と酸化増量の関係
7.7 耐食性(1) 7.8 耐孔食性
■8. SUS630(析出硬化系) 8.1 諸特性 8.2 SL-A2との比較(1) 8.3 SL-A2との比較(2)
8.4 摩擦摩耗特性 8.5 耐焼付性 8.6 耐食性(1)
8.7 耐食性(2) 8.8 耐孔食性 8.9 熱処理寸法変化
8.10 温度と酸化増量の関係 8.11 応力腐食割れ性
■9. SUS420J2(マルテンサイト系) 9.1 諸特性 9.2 耐食性(1) 9.3 耐孔食性
9.4 熱処理寸法変化 9.5 摩擦摩耗特性 9.6 応力腐食割れ性
■10. SUS440C(マルテンサイト系) 10.1 諸特性 10.2 耐食性(1) 10.3 耐食性(2)
10.4 耐孔食性 10.5 熱処理寸法変化 10.6 摩擦摩耗特性
【New】 2007.6.23 追加
■11. SUS304(オーステナイト系)
11.1 諸特性 11.2 耐食性(1) 11.3 耐食性(2)
11.4 耐孔食性 11.5 ステンレスの耐食性 11.6 摩擦摩耗特性
11.7 耐焼付性 11.8 摩擦摩耗特性(詳細版2)
【New】 2007.6.23 追加
■12. SUS316L(オーステナイト系)
12.1 諸特性 12.2 耐食性(1) 12.3 耐食性(2)
12.4 耐孔食性 12.5 ステンレスの耐食性 12.6 耐焼付性
■13.S55C-Normal(炭素鋼) 13.1 諸特性
■14.表面改質技術 14.1 特殊浸炭処理 14.2 低温窒化処理 14.3 表面改質の耐食性
【New】 2007.4.25 追加
■15.トライボロジー
   (摩擦摩耗特性)
15.1 摩擦摩耗特性(簡易版) 15.2 耐焼付性
15.3 摩擦摩耗特性(詳細版1) 15.4 摩擦摩耗特性(詳細版2) 15.5 摩擦摩耗特性(詳細版3)
15.6 摩擦摩耗特性(詳細版4) 15.7 摩擦摩耗特性(詳細版5)