本資料に掲載されている技術情報は一般的な特性を説明する為のもので、
これにより何らかの保証をするものではありませんので予めご了承ください。
【File No.Trybology-002】
析出硬化系シリコロイの焼付き試験
1. 特殊ナットによる焼付き試験方法
 実用的な焼付き現象の比較を行うため、特殊ナットを用いた焼付き試験を行った。特殊ナットはゆるみ止めを目的としたナットで、
内部のバネ作用(SUS301)によりボルトのネジ山を強圧し、自由回転を阻止する摩擦トルクを発生させるメカニズムとなっている。
一般的には潤滑剤を用いて使用するものである。今回は無潤滑で締結することで焼付き試験に応用し、各材質の比較を行った。
 試験方法は各材質のボルト(M17×40 ピッチ1.0)に特殊ナットを締結(レンチでねじ込み、ねじ戻しを3回行う)し、焼付き評価を
行った。ここでいう焼付きとは特殊ナットが固着して動かなくなる状態をいう。
Data No.SLAX-SITR2004-TRI-2006091001
2. 焼付き試験の評価結果
 結果は無潤滑ではSL-A2(C)、SL-XVI(C)の特殊浸炭を行ったものが良好で、焼付き、摩耗の発生はない。次いでSL-XVIの時効
処理材は締結時の抵抗はあるものの焼付きの発生がなかった。SUS316L(C)は焼付きの発生はないものの、締結回数の増加に
伴いボルト側に摩耗が発生した。SL-A2(C)、SL−XVI(C)の650℃の高温時効処理を行っているものは表面硬度がHV593、HV620と
若干低いものの良好な結果であった。逆にSUS630(C)は同様の表面改質を行い表面硬度が高いにも関わらず焼付きが発生した。
 これらの差異は析出硬化系シリコロイ鋼のマトリックス硬度、析出物、化学成分に含まれるSiの自己潤滑性、特殊浸炭処理による
表面硬度およびCの相乗効果に起因するものと考察される。
材質 熱処理 表面改質処理 酸洗 硬度 試験方法 結果
表面 中心部 評価 試験後の状態
SUS304 S - なし HV190 潤滑剤あり 焼付き,摩耗は発生せず
SUS304 S - なし HV190 無潤滑 × 焼付き発生
SUS304 (C) S 特殊浸炭 なし HV503 HV190 無潤滑 摩耗発生
SUS304 (C) S 特殊浸炭 あり HV503 HV190 無潤滑 × 焼付き発生
SUS316L (C) S 特殊浸炭 なし HV800 HV170 無潤滑 ○〜△ 締結回数の増加に伴い摩耗発生
SUS630 (C) OAG 特殊浸炭 なし HV907 HV344 無潤滑 × 焼付き発生
SL-A2 (C) OAG 特殊浸炭 なし HV593 HV400 無潤滑 焼付き,摩耗は発生せず
SL-XVI S - なし HV400 無潤滑 × 焼付き発生
SL-XVI AG - なし HV690 無潤滑 焼付き,摩耗は発生せず
SL-XVI OAG - なし HV440 無潤滑 × 焼付き発生
SL-XVI (C) S 特殊浸炭 なし HV1228 HV690 無潤滑 焼付き,摩耗は発生せず
SL-XVI (C) OAG 特殊浸炭 なし HV620 HV440 無潤滑 焼付き,摩耗は発生せず
試験片特殊ナット,M17×40 P1.0
熱処理 S:溶体化熱処理、OAG:650℃/AC、AG:450℃/AC
(C):特殊浸炭処理、特殊浸炭処理温度:470℃×22h
Data No.SLAX-SITR2004-TRI-2006091001
3. 焼付き試験後の外観
Data No.SLAX-SITR2004-TRI-2006091001
 <関連サイト>
【New】 2007.4.25 追加
■15.トライボロジー
   (摩擦摩耗特性)
13.1 摩擦摩耗特性(簡易版) 13.2 耐焼付性
13.3 摩擦摩耗特性(詳細版1) 13.4 摩擦摩耗特性(詳細版2) 13.5 摩擦摩耗特性(詳細版3)
13.6 摩擦摩耗特性(詳細版4) 13.7 摩擦摩耗特性(詳細版5)

◆ 本ページのキーワード
Material: シリコロイA2、シリコロイXVI、SUS630、SUS304、SUS316L
特  性: 耐焼付き
Technology: Si、析出物、C、特殊浸炭処理

<Site Map>
項目 サイト名
■1. シリコロイとは? 1.1 What’s Silicolloy? 1.2 析出硬化とは? 1.3 History
■2. 応用製品例 2.1 リップ・精密金型 2.2 連続鋳造用ローラー 2.3 製品例
■3. お問合せ先 3.1 Company Profile 3.2 サービス体制
■4. シリコロイA2(析出硬化系) 4.1 諸特性
  ◆トライボロジー 4.2 摩擦摩耗特性 4.3 耐焼付性
  ◆耐食性 4.4 耐食性(1) 4.5 耐食性(2) 4.6 耐孔食性
4.7 応力腐食割れ性
  ◆耐熱性 4.8 高温特性(1) 4.8 高温特性(2) 4.9 耐ヒートチェック特性
4.10 耐高温腐食性 4.11 温度と酸化増量の関係
  ◆熱処理特性 4.13 時効硬化熱処理特性 4.14 低温時効処理特性 4.15 溶体化熱処理特性
4.16 低温溶体化特性 4.17 再溶体化熱処理特性 4.18 SUS630との比較(1)
4.19 SUS630との比較(2)
  ◆プロセス技術 4.20 熱処理寸法変化 4.21 加工性 4.22 加工プロセス
4.23 局部高硬度化技術
■5. シリコロイXVI(析出硬化系) 5.1 諸特性 5.2 摩擦摩耗特性 5.3 耐焼付性
5.4 耐食性(1) 5.5 耐食性(2) 5.6 耐孔食性
5.7 熱処理寸法変化 5.8 溶体化熱処理特性 5.9 局部高硬度化技術
■6. シリコロイB2(2相系) 6.1 諸特性 6.2 耐食性(1) 6.4 シリコロイB2の耐食性
6.5 高温特性(1) 6.6 耐ヒートチェック特性 6.7 温度と酸化増量の関係
■7. シリコロイD(オーステナイト系) 7.1 諸特性 7.2 高温特性(1) 7.3 高温特性(2)
7.4 耐ヒートチェック特性 7.5 耐高温腐食性 7.6 温度と酸化増量の関係
7.7 耐食性(1) 7.8 耐孔食性
■8. SUS630(析出硬化系) 8.1 諸特性 8.2 SL-A2との比較(1) 8.3 SL-A2との比較(2)
8.4 摩擦摩耗特性 8.5 耐焼付性 8.6 耐食性(1)
8.7 耐食性(2) 8.8 耐孔食性 8.9 熱処理寸法変化
8.10 温度と酸化増量の関係 8.11 応力腐食割れ性
■9. SUS420J2(マルテンサイト系) 9.1 諸特性 9.2 耐食性(1) 9.3 耐孔食性
9.4 熱処理寸法変化 9.5 摩擦摩耗特性 9.6 応力腐食割れ性
■10. SUS440C(マルテンサイト系) 10.1 諸特性 10.2 耐食性(1) 10.3 耐食性(2)
10.4 耐孔食性 10.5 熱処理寸法変化 10.6 摩擦摩耗特性
【New】 2007.6.23 追加
■11. SUS304(オーステナイト系)
11.1 諸特性 11.2 耐食性(1) 11.3 耐食性(2)
11.4 耐孔食性 11.5 ステンレスの耐食性 11.6 摩擦摩耗特性
11.7 耐焼付性 11.8 摩擦摩耗特性(詳細版2)
【New】 2007.6.23 追加
■12. SUS316L(オーステナイト系)
12.1 諸特性 12.2 耐食性(1) 12.3 耐食性(2)
12.4 耐孔食性 12.5 ステンレスの耐食性 12.6 耐焼付性
■13.S55C-Normal(炭素鋼) 13.1 諸特性
■14.表面改質技術 14.1 特殊浸炭処理 14.2 低温窒化処理 14.3 表面改質の耐食性
【New】 2007.4.25 追加
■15.トライボロジー
   (摩擦摩耗特性)
15.1 摩擦摩耗特性(簡易版) 15.2 耐焼付性
15.3 摩擦摩耗特性(詳細版1) 15.4 摩擦摩耗特性(詳細版2) 15.5 摩擦摩耗特性(詳細版3)
15.6 摩擦摩耗特性(詳細版4) 15.7 摩擦摩耗特性(詳細版5)