本資料に掲載されている技術情報は一般的な特性を説明する為のもので、
これにより何らかの保証をするものではありませんので予めご了承ください。
【File No.SurfaceModification-002】
析出硬化系シリコロイの表面改質技術 (2)
Surface Modification of Siicolloy
<低温窒化処理>
1.表面改質技術の応用
 半導体、液晶関連装置、精密金型、精密部品などナノレベルの制御を要する精密機械分野の材料としては、機械的特性以外にも熱処理技術、加工プロセスを含めた製造性、使用環境におけるライフサイクルの向上、経年変化等を含む長期安定性が求められています。将来的には材料、材料の製法、熱処理技術、加工技術、表面改質技術、表面処理技術など総合的なバランスと用途に適したプロセス設計が重要になってきます。
 析出硬化系シリコロイ鋼は硬度、耐食性、摩擦摩耗特性、耐焼付き性など総合的なポテンシャルとしてはステンレスの分野では比較的高く、特に同メカニズムのSUS630とは異なる特性を有します。しかしながら、製品や使用環境によっては満足な特性を得られない場合があります。
 析出硬化系シリコロイは焼入鋼よりも熱処理の自由度が高く、表面改質技術を併用しやすいという利点があります。以下に表面改質技術の併用により機能性を向上した例をご紹介します。
2.低温窒化処理とは?
 低温窒化処理は通常の窒化処理(570℃)よりも低い温度で処理するのが特徴です。SUS316の場合、通常の窒化処理と比較すると窒化膜が緻密で、以下のような特徴があります。

            (1)耐食性の劣化が少ない    (2)耐摩耗性の向上   (3)面荒れ、歪みが少ない

 SUS316(オーステナイト系ステンレス)の場合、HV1000程度の表面硬度が得られます。
今回、析出硬化系シリコロイ(基質:低炭素マルテンサイト))に低温窒化処理を応用した結果を以下にご報告します。

<シリコロイへの適用の利点>
  ◆ 析出硬化系シリコロイ単体で硬度不足の場合、表面硬度の向上がはかれます。
  ◆ 処理温度が410℃付近であるため、同時時効処理が可能です。
  ◆ 耐摩耗性の機能性向上につながります。
  ◆ 過時効処理、高周波熱処理との併用で、局部的な高硬度化、靭性の確保、硬度の傾斜機能性を付加できます。

 2.1 シリコロイA2への応用
  (1)硬度と硬化深度の関係
Data No.SLAX-SITR2006-2006113001
  (2)硬度と硬化深度の関係(表面拡大図)
Data No.SLAX-SITR2006-2006113002
  (3)試験結果
   ◆シリコロイA2(溶体化処理)  : 表面硬度;HV1200程度、硬化深度;10μm以下
     同時時効処理で全体硬度がHV570程度、表面がHV1050程度になります。
   ◆シリコロイA2(過時効処理)  : 表面硬度;HV1260程度、中心部硬度:HV400程度
     低温窒化処理前に過時効処理で時効硬化のマスキング処理を行うことで、内部の靭性を確保できます。

 2.2 シリコロイXVIへの応用
  (1)硬度と硬化深度の関係
Data No.SLAX-SITR2006-2006113003
  (2)硬度と硬化深度の関係(表面拡大図)
Data No.SLAX-SITR2006-2006113004
  (3)試験結果
   ◆シリコロイXVI(溶体化処理)  : 表面硬度;HV1300程度、硬化深度;10μm以下
     同時時効処理で全体硬度がHV670程度、表面がHV1300程度になります。
   ◆シリコロイXVI(過時効処理)  : 表面硬度;HV1300程度、中心部硬度:HV510程度
     低温窒化処理前に過時効処理で時効硬化のマスキング処理を行うことで、内部の高硬度化(時効硬化)を防げます。

 2.3 シリコロイB2への応用
  (1)硬度と硬化深度の関係
Data No.SLAX-SITR2006-2006113005
  (2)硬度と硬化深度の関係(表面拡大図)
Data No.SLAX-SITR2006-2006113006
  (3)試験結果
   ◆シリコロイB2(二相ステンレス)  : 表面硬度;HV780程度、硬化深度;10μm以下、中心部硬度:HV280程度

 2.4 SUS304への応用
  (1)硬度と硬化深度の関係
Data No.SLAX-SITR2006-2006113007
  (2)硬度と硬化深度の関係(表面拡大図)
Data No.SLAX-SITR2006-2006113008
  (3)試験結果
   ◆SUS304(オーステナイト系ステンレス)  : 表面硬度;HV980程度、硬化深度;10μm以下、中心部硬度:HV220程度
  ◆表面改質技術の効果については以下のサイトをご参照ください。
No サイト名 内容
1 表面硬度(1) 表面硬度試験(1)
2 表面硬度(2) 表面硬度試験(2)
3 ステンレスの摩擦摩耗特性 ピンオンディスク摩擦摩耗試験
4 耐焼付き試験 特殊ナットを用いた焼付き試験
5 耐食性試験 純水浸漬試験、塩水浸漬試験

◆ 本ページのキーワード
Material: シリコロイA2、シリコロイXVI、シリコロイB2、SUS304
特  性: 硬度、靭性
Technology: 低温窒化、過時効時処理、マスキング、同時時効

 <Site Map>
項目 サイト名
■1. シリコロイとは? 1.1 What’s Silicolloy? 1.2 析出硬化とは? 1.3 History
■2. 応用製品例 2.1 リップ・精密金型 2.2 連続鋳造用ローラー 2.3 製品例
■3. お問合せ先 3.1 Company Profile 3.2 サービス体制
■4. シリコロイA2(析出硬化系) 4.1 諸特性
  ◆トライボロジー 4.2 摩擦摩耗特性 4.3 耐焼付性
  ◆耐食性 4.4 耐食性(1) 4.5 耐食性(2) 4.6 耐孔食性
4.7 応力腐食割れ性
  ◆耐熱性 4.8 高温特性(1) 4.8 高温特性(2) 4.9 耐ヒートチェック特性
4.10 耐高温腐食性 4.11 温度と酸化増量の関係
  ◆熱処理特性 4.13 時効硬化熱処理特性 4.14 低温時効処理特性 4.15 溶体化熱処理特性
4.16 低温溶体化特性 4.17 再溶体化熱処理特性 4.18 SUS630との比較(1)
4.19 SUS630との比較(2)
  ◆プロセス技術 4.20 熱処理寸法変化 4.21 加工性 4.22 加工プロセス
4.23 局部高硬度化技術
■5. シリコロイXVI(析出硬化系) 5.1 諸特性 5.2 摩擦摩耗特性 5.3 耐焼付性
5.4 耐食性(1) 5.5 耐食性(2) 5.6 耐孔食性
5.7 熱処理寸法変化 5.8 溶体化熱処理特性 5.9 局部高硬度化技術
■6. シリコロイB2(2相系) 6.1 諸特性 6.2 耐食性(1) 6.4 シリコロイB2の耐食性
6.5 高温特性(1) 6.6 耐ヒートチェック特性 6.7 温度と酸化増量の関係
■7. シリコロイD(オーステナイト系) 7.1 諸特性 7.2 高温特性(1) 7.3 高温特性(2)
7.4 耐ヒートチェック特性 7.5 耐高温腐食性 7.6 温度と酸化増量の関係
7.7 耐食性(1) 7.8 耐孔食性
■8. SUS630(析出硬化系) 8.1 諸特性 8.2 SL-A2との比較(1) 8.3 SL-A2との比較(2)
8.4 摩擦摩耗特性 8.5 耐焼付性 8.6 耐食性(1)
8.7 耐食性(2) 8.8 耐孔食性 8.9 熱処理寸法変化
8.10 温度と酸化増量の関係 8.11 応力腐食割れ性
■9. SUS420J2(マルテンサイト系) 9.1 諸特性 9.2 耐食性(1) 9.3 耐孔食性
9.4 熱処理寸法変化 9.5 摩擦摩耗特性 9.6 応力腐食割れ性
■10. SUS440C(マルテンサイト系) 10.1 諸特性 10.2 耐食性(1) 10.3 耐食性(2)
10.4 耐孔食性 10.5 熱処理寸法変化 10.6 摩擦摩耗特性
【New】 2007.6.23 追加
■11. SUS304(オーステナイト系)
11.1 諸特性 11.2 耐食性(1) 11.3 耐食性(2)
11.4 耐孔食性 11.5 ステンレスの耐食性 11.6 摩擦摩耗特性
11.7 耐焼付性 11.8 摩擦摩耗特性(詳細版2)
【New】 2007.6.23 追加
■12. SUS316L(オーステナイト系)
12.1 諸特性 12.2 耐食性(1) 12.3 耐食性(2)
12.4 耐孔食性 12.5 ステンレスの耐食性 12.6 耐焼付性
■13.S55C-Normal(炭素鋼) 13.1 諸特性
■14.表面改質技術 14.1 特殊浸炭処理 14.2 低温窒化処理 14.3 表面改質の耐食性
【New】 2007.4.25 追加
■15.トライボロジー
   (摩擦摩耗特性)
15.1 摩擦摩耗特性(簡易版) 15.2 耐焼付性
15.3 摩擦摩耗特性(詳細版1) 15.4 摩擦摩耗特性(詳細版2) 15.5 摩擦摩耗特性(詳細版3)
15.6 摩擦摩耗特性(詳細版4) 15.7 摩擦摩耗特性(詳細版5)