【File No.WhatSL-001】
What's Silicolloy?
1. What's Silicolloy
 シリコロイは化学成分のひとつにSi(ケイ素)を3.5〜4.0%と多量に含有するステンレスです。
従来不純物として考えられていたSiを、C(炭素)の代替として積極利用することで様々な特性を有する新素材が誕生しました。
1.1 Siの利点
(1) Cは強度、硬度に反比例して耐食性は劣化するが、Siは耐食性が劣化しにくい。
(2) Si系の硬質な金属間化合物を形成する(析出硬化系)。
(3) 耐高温酸化性に有効。
(4) ステンレスの問題のひとつである、、耐焼付き特性が向上。
1.2 シリコロイの種類 : シリコロイは用途に合わせた4種類の鋼種があります。
(1) シリコロイA2 (析出硬化系)・・・高強度・オールラウンド用鋼
  高強度、高硬度、耐食性、耐熱性、耐摩耗性、耐焼付き性をバランスよく兼ね備えるオールラウンド型。
 ◆ SUS630 → 硬度、耐摩耗性、耐焼付き性の向上   ◆ マルエージング鋼 → 耐食性の向上
 ◆ SUS420J2、SUS440C → 耐食性の向上、熱処理歪み、熱処理寸法変化の抑制、表面改質との複合化
シリコロイXVI (倍率:5000倍)
1μm以下のSi系の微細金属間化合物
(HV1000〜1500)が時効硬化熱処理に
より分散析出することで高硬度化する。
No.SLAX-NSTR2000-KTR-2006091001
Data No.SLABDX-SITR2006-2006091001
(2) シリコロイXVI (析出硬化系)・・・高硬度高耐食用鋼(高清浄度鋼:真空溶解)
  析出硬化系ステンレスでは最高硬度を実現、SUS630相当の耐食性を有しながら、HRC56±2の高硬度を達成。
 ◆ SUS630 → 硬度、耐摩耗性、耐焼付き性の向上   ◆ マルエージング鋼 → 耐食性の向上
 ◆ SUS420J2、SUS440C → 耐食性の向上、熱処理歪み、熱処理寸法変化の抑制、表面改質との複合化
 ◆ ステライト → 歩留まり向上、プロセス改善、鏡面性の向上
(3) シリコロイB2 (2相ステンレス:オーステナイト、フェライト)・・・耐食用鋼
  SUS316同等以上の耐食性、オーステナイト系ステンレスの問題点である耐応力腐食割れ性、耐焼付性に優れる。
 ◆ SUS304、SUS316 → 耐応力腐食割れ性、耐焼付性の向上
 ◆ SUS310S → 耐高温酸化特性の向上
(4) シリコロイD (オーステナイト系)・・・耐熱・耐高温酸化用鋼
  SUS310S同等の熱間強度、インコネル601、インコネル625に迫る耐高温酸化特性を有する。
  また耐ヒートチェック性(耐熱衝撃性)にも優れる。
 ◆ SUS310S → 耐高温酸化特性の向上   ◆インコネル601、インコネル625 → 耐高温酸化特性とトータルコスト
2. 硬度と耐食性のバランス
 シリコロイA2およびシリコロイXVIは、硬度と耐食性のバランスに優れています。
Data No.SLABDX-SITR2006-2006091001

3. 析出硬化系シリコロイの諸特性(シリコロイA2,シリコロイXVI)
 3.1 時効硬化熱処理の特徴
 析出硬化系ステンレスは焼入鋼と比較して、低温の熱処理で高硬度化(時効硬化熱処理)するので、焼入れでの諸問題(熱処理変形、歪み、寸法変化、焼き割れ、残留オーステナイトに起因する経年変化、他)が少ないのが特徴です。
ヒートパターン
シリコロイA2、シリコロイXVI
 3.2 時効温度と硬度の関係
 シリコロイA2およびシリコロイXVIの両鋼種ともに、最も硬くなる時効硬化熱処理温度は500℃付近となります。
また時効硬化熱処理温度は靭性を重視する場合や硬度を重視する場合など、SUS630のH900やH1150のように
ある程度使い分けることができます。
Data No.SLX-TSTR2002-R02022-2006091001
 3.3 時効時間と硬度の関係
 シリコロイA2およびシリコロイXVIの両鋼種ともに、最も硬くなる時効硬化熱処理温度は500℃付近で、以下に最も
硬くなる熱処理の推奨例を示します。

     ◆ シリコロイA2 : 480℃×6hour/AC       ◆ シリコロイXVI : 450℃×8〜10hour/AC

*上記はテストピースでの試験結果です。 熱処理条件は形状や用途によって異なりますので予めご了承ください。
Data No.SALX-NSTR2000-2006091001
 3.4 熱処理寸法変化
 シリコロイA2およびシリコロイXVIの時効硬化熱処理での歪み特性は450〜500℃の場合、±0.05%以下と良好です。
また高温時効を行う場合は、寸法変化することを考えたプロセス設計が必要となります。

  *本試験結果は熱処理歪み試験の一例ですので、参考例としてください
Data No.SLAX-SITR2006-MD-2006091001
Data No.SLAX-SITR2006-MD-2006091001
 3.5 高温硬度
 シリコロイXVI(時効硬化)の高温硬度は500℃以下の環境においては比較的高い硬度を示します。
  *AG:時効硬化熱処理、ST:溶体化熱処理
Data No.SLX-TSTR2002-R02022-2006091001
 3.6 ステライトの高温硬度
 常温においてシリコロイXVI(時効硬化)の硬度はステライトNo1に匹敵します。また高温環境においては、約400℃まではステラ
No1相当ですが、600℃を越えるとステライトの方が軟化しにくい特性があります。
Data No.SLX-TSTR2002-R02022-2006091001
Data No.SLX-SITR2006-KTWL-2006091001
 3.7 硬度の傾斜機能性
 時効硬化熱処理のマスキング処理技術(高温時効処理)、局部溶体化技術(高周波熱処理等)、時効硬化熱処理、表面改質技術(特殊浸炭処理、低温窒化等)を併用したプロセス技術を確立することで、必要部のみの高硬度化、硬度の傾斜機能化、硬度と靭性の両立が可能になります。
Data No.SLAX-SITR2006-2006091001
 3.8 析出硬化系シリコロイの利点
(1) 硬度と耐食性のバランスに優れ、長寿命化によるメンテナンスフリー、トータルコストダウンに貢献します。
(2) 焼入鋼に比較して低温の熱処理で高硬度化するため、SUS440C,SUS420J2、ステライトなどの加工プロセス改善に
   貢献します。
(3) 高周波熱処理、表面改質技術などの複合処理で、局部高硬度化や硬度の傾斜機能化を実現できます。
 <関連サイト>
■1. シリコロイとは? 1.1 What’s Silicolloy? 1.2 析出硬化とは? 1.3 History

◆ 本ページのキーワード
Material :シリコロイA2、シリコロイXVI、シリコロイB2、シリコロイD、SUS630、SUS304、SUS316L、SUS420J2、SUS440C
特  性 :硬度、耐食性、孔食電位、オールラウンド性
Technology :金属間化合物、Si、Low-C

 <Site Map>
項目 サイト名
■1. シリコロイとは? 1.1 What’s Silicolloy? 1.2 析出硬化とは? 1.3 History
■2. 応用製品例 2.1 リップ・精密金型 2.2 連続鋳造用ローラー 2.3 製品例
■3. お問合せ先 3.1 Company Profile 3.2 サービス体制
■4. シリコロイA2(析出硬化系) 4.1 諸特性
  ◆トライボロジー 4.2 摩擦摩耗特性 4.3 耐焼付性
  ◆耐食性 4.4 耐食性(1) 4.5 耐食性(2) 4.6 耐孔食性
4.7 応力腐食割れ性
  ◆耐熱性 4.8 高温特性(1) 4.8 高温特性(2) 4.9 耐ヒートチェック特性
4.10 耐高温腐食性 4.11 温度と酸化増量の関係
  ◆熱処理特性 4.13 時効硬化熱処理特性 4.14 低温時効処理特性 4.15 溶体化熱処理特性
4.16 低温溶体化特性 4.17 再溶体化熱処理特性 4.18 SUS630との比較(1)
4.19 SUS630との比較(2)
  ◆プロセス技術 4.20 熱処理寸法変化 4.21 加工性 4.22 加工プロセス
4.23 局部高硬度化技術
■5. シリコロイXVI(析出硬化系) 5.1 諸特性 5.2 摩擦摩耗特性 5.3 耐焼付性
5.4 耐食性(1) 5.5 耐食性(2) 5.6 耐孔食性
5.7 熱処理寸法変化 5.8 溶体化熱処理特性 5.9 局部高硬度化技術
■6. シリコロイB2(2相系) 6.1 諸特性 6.2 耐食性(1) 6.4 シリコロイB2の耐食性
6.5 高温特性(1) 6.6 耐ヒートチェック特性 6.7 温度と酸化増量の関係
■7. シリコロイD(オーステナイト系) 7.1 諸特性 7.2 高温特性(1) 7.3 高温特性(2)
7.4 耐ヒートチェック特性 7.5 耐高温腐食性 7.6 温度と酸化増量の関係
7.7 耐食性(1) 7.8 耐孔食性
■8. SUS630(析出硬化系) 8.1 諸特性 8.2 SL-A2との比較(1) 8.3 SL-A2との比較(2)
8.4 摩擦摩耗特性 8.5 耐焼付性 8.6 耐食性(1)
8.7 耐食性(2) 8.8 耐孔食性 8.9 熱処理寸法変化
8.10 温度と酸化増量の関係 8.11 応力腐食割れ性
■9. SUS420J2(マルテンサイト系) 9.1 諸特性 9.2 耐食性(1) 9.3 耐孔食性
9.4 熱処理寸法変化 9.5 摩擦摩耗特性 9.6 応力腐食割れ性
■10. SUS440C(マルテンサイト系) 10.1 諸特性 10.2 耐食性(1) 10.3 耐食性(2)
10.4 耐孔食性 10.5 熱処理寸法変化 10.6 摩擦摩耗特性
【New】 2007.6.23 追加
■11. SUS304(オーステナイト系)
11.1 諸特性 11.2 耐食性(1) 11.3 耐食性(2)
11.4 耐孔食性 11.5 ステンレスの耐食性 11.6 摩擦摩耗特性
11.7 耐焼付性 11.8 摩擦摩耗特性(詳細版2)
【New】 2007.6.23 追加
■12. SUS316L(オーステナイト系)
12.1 諸特性 12.2 耐食性(1) 12.3 耐食性(2)
12.4 耐孔食性 12.5 ステンレスの耐食性 12.6 耐焼付性
■13.S55C-Normal(炭素鋼) 13.1 諸特性
■14.表面改質技術 14.1 特殊浸炭処理 14.2 低温窒化処理 14.3 表面改質の耐食性
【New】 2007.4.25 追加
■15.トライボロジー
   (摩擦摩耗特性)
15.1 摩擦摩耗特性(簡易版) 15.2 耐焼付性
15.3 摩擦摩耗特性(詳細版1) 15.4 摩擦摩耗特性(詳細版2) 15.5 摩擦摩耗特性(詳細版3)
15.6 摩擦摩耗特性(詳細版4) 15.7 摩擦摩耗特性(詳細版5)