熱処理
時効硬化熱処理後のテンパーカラー(真空炉)
Vacume Heat Treatment
時効硬化熱処理を大気熱処理炉で実施した場合、テンパーカラー(薄い酸化スケール層)の付着は否めません。
テンパーカラーは30~100nm程度と推測され、研磨すると除去できます。しかしながら製品の全面や孔の内部等は除去しにくいという課題があります。
今回、析出硬化型ステンレスの時効硬化熱処理を真空熱処理で実施し、熱処理後の色調の調査をしましたのでご報告致します。
1. 試験片
- 材質:シリコロイA2(φ30mm×10mm)、シリコロイXV(I φ28mm×10mm)、SUS630(φ25mm×10~15mm)
- 表面粗度:耐水ペーパー#400仕上(全面)
- 試験前の熱処理状態:固溶化熱処理
- 脱脂処理:アセトンにて超音波洗浄(5min)
2. 試験方法
- 試験片に各薬液を塗布(大気熱処理では切削油等が付着している場合、部分的に酸化が進みにムラができることがある)
アセトン、アセトン+超音波洗浄、エタノール、トリクレン、潤滑油、切削油、灯油 - 真空熱処理炉で時効硬化熱処理を施した後、外観検査。
- 時効硬化熱処理条件:460℃×6hour/ガス冷却
- 熱処理:真空熱処理炉、真空度:1×10-2Torr=1.4MPa
3. 試験結果
- シリコロイA2およびシリコロイXVIの色調はシルバーの状態であったが、SUS630は金色のテンパーカラーが付着した。また色調は薬液の種類には依存せずしていない。
- シリコロイはケイ素(Si)を多く含有し酸化が進行しにくい特徴があるため、析出硬化系シリコロイは真空時効処理によりテンパーカラーの付着を抑制できることが判明した。
- SUS630に金色のテンパーカラーが付着したのは、真空度が低いものの酸素が残存するためだと思われる。
SUS630はテンパーカラーが付着したものの、酸化スケールの厚さは真空時効処理の方が大気熱処理より薄くなっている。 - 大気熱処理炉での色調は以下のようになります。
以下の結果は材質表面の酸化のしやすさが関係しているものと思われます。
酸化スケール層が薄い ← シリコロイXV(I 金色) < シリコロイA2(金色~茶色) < SUS630(茶色~紫色)
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