成功事例
連続鋳造用ローラー
Continuous Casting Roller
- 導入前の課題
- ローラーの摩耗によりメンテナンス回数が多い。
- メンテナンス費用がかかる。
- 導入後の改善
- ローラーの摩耗量が低減し、メンテナンス回数およびメンテナンス費用が減少。
- 設備の稼働時間向上により、トータルコストダウンに貢献。
- 長寿命化の例:約3~6倍(※お客様の使用環境、比較材、使用方法等によって異なりますのでご注意下さい)
シリコロイのメリット
- 複合特性
- シリコロイA2はひとつの鋼で耐熱性、耐食性、耐高温摩耗性、耐熱衝撃性(耐ヒートチェック性)を兼ね備えており、長寿命化に貢献します。
- リサイクル性
- 再熱処理(再固溶化・過時効処理)することで熱処理履歴をキャンセルできます。熱処理後、追加工することでリサイクルすることが可能です(形状によりますのでご注意下さい。)
1. 連続鋳造用ローラーとは
連続鋳造とは、連続鋳造方式で溶鋼を固めて鋳造片(ビレット、ブルーム、スラブ)をつくる方法です。
モールドから注がれる溶鋼を、ローラーで組まれた鋳型に連続的に注ぎ込んで鋳造片に成形します。
連続鋳造用ローラーは、1000℃以上の溶鋼に直接触れるため、耐熱性、高温強度、耐摩耗性が必要になります。 更に水冷やモールドパウダーを使用するため、耐食性や耐ヒートチェック性(急熱急冷の耐熱衝撃性)も必要になります。
連続鋳造用ローラーは耐熱性・高温強度・耐摩耗性・耐食性・耐ヒートチェック性が同時に要求される重要な製品です。
シリコロイA2製の連続鋳造用ローラーは総合力に優れ、ローラーの長寿命化による取替回数・メンテナンス費の低減に貢献します。
2. 連続鋳造用ローラー
2-1. 連続鋳造用ローラーの概略
2-2. 連続鋳造用ローラーの使用環境および必要特性
No | 分類 | 使用環境 | 必要特性 | |
---|---|---|---|---|
01 | 耐熱性 | 熱間強度 | 約300~1000℃での高温 (ロールの接触温度: 約400~700℃) |
熱間強度が高く、ローラーの曲がり変形が生じにくいこと。ローラーの過度の曲がりはビレットやスラブ品質を損なう。 |
02 | 高温硬度・耐磨耗性 | 高温硬度が高く、ローラー径の耐摩耗性に優れること。ローラー径の摩耗量が多くなると、ビレットやスラブを圧縮する効果が減少し、品質を損なう。 | ||
03 | 耐高温酸化性 | 高温での耐酸化性が強いこと | ||
04 | 耐食性 | 水、強酸性のパウダー | 冷却水、モールドパウダー (鋳型添加剤)の使用 |
水や強酸性のパウダーに対して耐食性が高いこと。耐隙間腐食性も必要。 |
05 | 破壊靭性 | 耐ヒートチェック性 (耐熱衝撃性) |
高温~急冷の繰り返し | ヒートクラックの発生が小さく、耐亀裂進展性に優れること。 |
06 | 耐高温腐食摩耗 | 耐フレッティング摩耗 | 1~5の総合的環境 | 耐高温腐食摩耗に優れ、ローラー表面のフレッティング摩耗が少ないこと。 |
- フレッティング摩耗(fretting wear):繰り返し荷重による弾性変形で、わずかなすべりが繰り返されることによる表面損傷。
- モールドパウダー(鋳型添加剤):鋳型と溶鋼の潤滑材でCaO,SiO2,Al2O3,MgO,NaO2,K2O,LiO2等の酸化物が主要成分でNaF,CaF,Na3AlF6,LiF,AlF3等のフッ化物を含有する。モールドパウダー中のフッ素は冷却水に溶解し、強酸性であるフッ酸となり、ローラーの腐食の原因にもなる。
2-3. 連続鋳造用ローラーの温度分布
ローラー内部の温度分布の一例(イメージ図) | ||
---|---|---|
(a)定常操業時の温度分布 | (b)スラブ停止1分後の温度分布 | (c)スラブ長時間停止時の温度分布 |
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- ローラー外径:480mm、ローラー内径:50mm、鋳造速度:0.65m/min、スラブ温度:900℃、内部水冷:あり、外部水冷:なし
3. シリコロイの特徴
3-1. シリコロイの特徴のまとめ
No | 分類 | 使用環境 | シリコロイA2 (OAG)の特徴 |
|
---|---|---|---|---|
01 | 耐熱性 | 熱間強度 | 約300~1000℃での高温 (ロールの接触温度: 約400~700℃) |
引張強度は常温で1100N/mm2、500℃で600N/mm2と比較的高く、ローラーの曲がり変形が生じにくい。但し700℃以上では何れの材質も強度は低下しますのでご注意下さい。 |
02 | 高温硬度・耐磨耗性 | 高温硬度は常温でHV320、600℃でHV200と比較的高く、ローラー径の耐摩耗性に優れています。 | ||
03 | 耐高温酸化性 | 化学成分にSiを約4%含有しているため、高温での耐酸化性に比較的強い。 | ||
04 | 耐食性 | 水、強酸性のパウダー | 冷却水、モールドパウダー (鋳型添加剤)の使用 |
水や強酸性のパウダーに対して比較的耐食性が高い。 |
05 | 破壊靭性 | 耐ヒートチェック性 (耐熱衝撃性) |
高温~急冷の繰り返し | ヒートクラックの発生が小さく、耐亀裂進展性に優れている。 |
06 | 耐高温腐食摩耗 | 耐フレッティング摩耗 | 1~5の総合的環境 | 上記の総合力に優れているため、ローラーの長寿命化に貢献します。 |
- シリコロイA2(OAG):過時効処理品(650℃/AC)
- 注意点:シリコロイA2を連続鋳造用ローラーとして使用する場合、熱処理は過時効処理(OAG:650℃/AC)を採用しています。
- 時効処理(AG:480℃/AC)では靭性が低く、溶体化熱処理(ST:1050℃/WQ)では使用中に時効硬化がかかってしまい靭性の低下につながりますので、ご注意下さい。
4. シリコロイの連続鋳造用ローラーへの応用例
4-1. 応用例1
4-1-1. 試験設備
項目 | 内容 |
---|---|
連続鋳造設備 | スラブ用 |
製造鋼種 | 普通鋼 |
スラブ寸法 | 幅:1000~1500mm、厚さ:200mm |
使用ローラー | フットロール(分割ローラー) |
使用ローラー寸法 | φ90mm×260mm 6列、φ100mm×260mm 6列 |
従来ローラー材質 | SUS321 |
試験期間 | 3ケ月間 |
使用チャージ数 | 1500チャージ、15万ton(調査時) |
- SUS321(オーステナイト系ステンレス)
- 概略:SUS304にTi(Nb,Ta)を添加し、炭化物安定化、耐粒界腐食、溶接性を改良した鋼種
- 化学成分:18Cr-12Ni-2Mn-0.4Ti
4-1-2. シリコロイA2の試験結果
(1)使用後ローラーの表面肌
(2)使用後ローラーの硬度
(3)まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
使用後ローラーの表面肌 | シリコロイA2はSUS321に比較して良好 |
使用後ローラーの硬度(常温) | シリコロイA2はSUS321に比較して硬度が高く、バラツキが少ない。 SUS321は設置場所によって硬度がバラツキやすい。原因としては熱影響によるものと推測されます。 |
廃却寿命 | SUS321は1000チャージでクラックは発生したため廃却。 シリコロイA2は3000チャージまで使用。ローラー径は2mm(片肉1mm)の摩耗。 |
評価 | シリコロイA2はスラブ接触面のクラック、硬度低下およびローラー径の摩耗がSUS321に比較して大幅に改善され、従来材の3倍の寿命評価を得た。 |
4-2. 応用例2
4-2-1. モールドフットロール摩耗試験
項目 | 内容 |
---|---|
従来材(STK)の摩耗減量 | 747チャージ後 1.長形(A面):2.62mm(片肉:1.31mm) 2.短径(B面):2.08mm(片肉:1.04mm) 3.平均:2.35mm(片肉:1.18mm) |
シリコロイA2の摩耗減量 | 747チャージ後 ①長形(A面):0.45mm(片肉:0.23mm) ②短径(B面):0.30mm(片肉:0.15mm) ③平均:0.38mm(片肉:0.19mm) |
評価 | シリコロイA2はローラー径の摩耗が従来材(STK)に比較して大幅に改善され、従来材の約6倍の寿命評価を得た。 |
5. シリコロイの諸特性
5-1. 高温の機械的性質
5-2. 耐高温酸化性
酸化増量は「Fig.1~2」を御覧ください。
5-3. 耐熱衝撃性(耐ヒートチェック性)
5-4. 耐食性
耐食性の一例は「Fig.8~11」を御覧ください。
5-5. リサイクル性(再固溶化熱処理の効果)
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