鋼種

シリコロイXVI(粉末積層造形法/金属3Dプリンター)
Silicolloy XVI

シリコロイXVI(金属粉末)は化学成分のひとつにSi(ケイ素)を多量に含有する析出硬化系ステンレスで、高強度、高硬度、耐食性、耐熱性、耐摩耗性、耐焼付き性をバランスよく兼ね備え、オールラウンド性を有します。析出硬化系ではHRC57の最高硬度を有し、特に高硬度、耐摩耗性、耐食性が必要な場合に有効です。

シリコロイA2の改良鋼種で析出硬化系ステンレスとしては最高硬度HRC54以上(55~58程度)を実現します。耐食性はオーステナイト系よりは劣りますが、マルテンサイト系、フェライト系より良好です。腐食環境にもよりますがシリコロイA2より良好な場合が多いです。

析出硬化系ステンレスは、焼入型と異なった熱処理プロセスで、比較的低温の熱処理で高硬度化するため、焼入鋼のような問題(熱処理歪み、寸法変化、焼き割れ、酸化スケールの付着など)が少なく、加工プロセス改善に有効です。

以下、シリコロイXVI(金属粉末)を金属3Dプリンターにて造形した場合の諸特性をご紹介します。

1.化学成分の一例

(wt%)

table.1
成分 C Si Mn P S Ni Cr Mo Cu Co Ti Fe 特殊
元素
規格 <0.020 3.00-5.00 0.50-1.50 <0.040 <0.030 6.00-7.00 10.00-13.00 1.00-2.00 0.80-1.20 4.80-5.00 0.40-1.00 Bal. Co,Ti,他
  • 化学成分は一例です。
  • 受注生産でコバルトレスのシリコロイXVIも製造可能です。

2.機械的性質

2.1 熱処理および硬度
table.2
熱処理 熱処理記号 固溶化熱処理 時効硬化熱処理 硬度
HV (500g) HRC
造形まま As 374 35.8
固溶化熱処理 ST 1050℃/WQ 380 39.1
時効硬化熱処理 LAG 1050℃/WQ 380℃×1hour/AC 544 50.0
時効硬化熱処理 DAG 1050℃/WQ 200℃×2hour,
460℃×12hr/AC
712 57.2
2.2 機械的性質
table.3
熱処理 熱処理記号 固溶化熱処理 時効硬化熱処理 引張強さ 耐力 伸び
MPa MPa
造形まま As 1280 1076 19.5
固溶化熱処理 ST 1050℃/WQ 1350 924 10.8
時効硬化熱処理 LAG 1050℃/WQ 380℃×1hour/AC 962 0.4
時効硬化熱処理 DAG 1050℃/WQ 200℃×2hour,
460℃×12hr/AC
1390 0.5

3.顕微鏡組織

顕微鏡組織観察ー造形まま
造形まま
顕微鏡組織観察ー固溶化熱処理
固溶化熱処理
顕微鏡組織観察ー時効硬化熱処理 380℃/AC
時効硬化熱処理
380℃/AC
顕微鏡組織観察ー時効硬化熱処理 200℃ + 460℃/AC
時効硬化熱処理
200℃+460℃/AC

fig.1顕微鏡組織観察