鋼種

マルエージング鋼
Marageing Steel

マルエージング鋼は低炭素、18%Ni、Co、Mo等を多く含有する超強力鋼で強度と靭性に優れています。析出硬化型で時効硬化熱処理により硬度および強度を向上させることができます。

1. 化学成分

主成分:0.01C-18Ni-5Mo-8Co-0.6Ti-残Fe

2.熱処理特性

2.1 時効時間と硬度の関係
時効時間と硬度の関係
Fig.1時効硬化熱処理時間と硬度の関係
  • 熱処理は一例です。

3.顕微鏡組織

3.1 溶体化熱処理
マルエージング鋼 溶体化熱処理
マルエージング鋼 溶体化熱処理
腐食液:ナイタール
(アルコール97%、硝酸:3%)

Photo 1顕微鏡組織 (200倍)

マルエージング鋼 溶体化熱処理
マルエージング鋼 溶体化熱処理
腐食液:ナイタール
(アルコール97%、硝酸:3%)

Photo 2顕微鏡組織 (400倍)

3.2 時効硬化熱処理
時効硬化熱処理(480℃×6hr/AC)
時効硬化熱処理(480℃×6hr/AC)
腐食液:ナイタール
(アルコール99%、硝酸:1%)

Photo 3顕微鏡組織 (200倍)

時効硬化熱処理(480℃×6hr/AC)
時効硬化熱処理(480℃×6hr/AC)
腐食液:ナイタール
(アルコール99%、硝酸:1%)

Photo 4顕微鏡組織 (400倍)

4.耐食性

4.1 塩酸腐食試験(5.0%HCl)
4.2 硫酸腐食試験(5.0%H2SO4
4.3 硝酸腐食試験(5.0%HNO3
4.4 200ppm次亜塩素酸ナトリウム腐食試験(200ppmNaClO)
4.5 10000ppm次亜塩素酸ナトリウム腐食試験(10000ppmNaClO)

5.耐熱衝撃性(耐ヒートチェック性)

6.マルエージング鋼をご使用の方へのご提案

コストダウン

シリコロイA2は時効硬化熱処理後の硬度がHRC50±2程度とマルエージング鋼に近く、また高価な合金の比率が低いためコストダウンができる可能性があります。

注意点:製品形状、製法、加工比率、加工プロセス、熱処理などによっては難しい場合もありますので、予めご了承下さい。

耐食性と高硬度の両立

近年、腐食環境がより一層厳しくなってきていますが、マルエージング鋼で耐食性を向上させたい方には析出硬化系のシリコロイA2およびシリコロイXVIが有効です。

高温での使用

シリコロイA2は耐ヒートチェック性に優れており、連続鋳造用ローラーとしての実績は多数あります。

連続鋳造用ローラーはビレットなどの鉄鋼半製品を成形する装置の主要部品で、溶融した鉄が直接ローラーに触れ、また水冷を行うため、熱と冷却の繰り返しの環境で非常に過酷な環境です。シリコロイA2は従来材と比較してローラーの長寿命化に貢献しています。

*注意点:シリコロイA2の熱処理は耐ヒートチェック性を目的として過時効処理(OAG:650℃/AC)を採用しています。

また高温硬度が必要な場合は、シリコロイA2よりもシリコロイXVIの方が有効です(500℃の高温硬度はHV500程度です)。

より詳細な情報は、以下をご参考ください。

表面改質の併用

シリコロイA2およびシリコロイXVIの更なる高硬度化には、低温窒化処理や特殊浸炭処理などの表面改質の併用も可能です。

時効硬化熱処理の温度帯なので、同時時効処理も可能です。

より詳細な情報は、以下をご参考ください。