鋼種 SUS630SUS630 析出硬化系ステンレスの代表鋼で、耐食性と高強度を兼ね備えています。 SUS630は1020~1060℃の固溶化熱処理(溶体化熱処理)後に、析出硬化熱処理(時効硬化熱処理)を施し、Cu-rich相を析出させることで、高強度と高硬度を得られます。硬度を重視するH900(470~490℃/AC)から靭性を重視するH1150(610~630℃/AC)まで4段階の熱処理が規定されています。 化学成分の一例 物理的性質の一例 縦弾性係数(ヤング率) 機械的性質 時効硬化曲線(時効処理時間と硬度の関係) 低温衝撃値 顕微鏡組織 耐食性 1.化学成分の一例 (wt%) table.1 成分 C Si Mn P S Cu Ni Cr Nb+Ta Fe 規格 ≤0.07 ≤1.00 ≤1.00 Max 0.040 Max0.030 3.00- 5.00 3.00- 5.00 15.50- 17.50 0.15- 0.450 Bal. 成績例 0.05 0.25 0.89 0.035 0.006 3.33 4.25 15.59 0.37 上記は化学成分の一例ですので、ご参考程度にお考え下さい。 2.物理的性質の一例 table.2 熱処理 状態 密度 g/cm3 透磁率 (常温) 比熱 (cal/g℃) 線熱膨張係数 ×10-6/℃ 熱伝導率 (W/mK) 100Oe 200Oe 0~100℃ 20~ 100℃ 20~ 200℃ 20~ 300℃ 20~ 400℃ 150℃ 250℃ 450℃ 固溶化 熱処理 7.78 74 48 0.11 10.8 10.8 11.1 11.3 – – – H900 7.78 90 56 0.11 10.8 10.9 11.3 11.7 17.6 19.3 22.2 H1075 7.81 88 52 – 11.3 11.7 11.9 12.2 – – – H1150 7.78 59 88 – 11.9 12.4 12.8 12.9 – – – 3.縦弾性係数(ヤング率) table.3 熱処理状態 ポアソン比 縦弾性係数 (GPa) 0℃ 50℃ 100℃ 固溶化熱処理 – 197 197 194 H900 0.272 208 205 203 H1075 0.272 – – – H1150 0.272 – – – 4.機械的性質 4.1 熱処理規格 table.4 種類 熱処理 記号 熱処理 引張強さ N/mm2 耐力 N/mm2 伸び % 硬度 HRC 固溶化熱処理 S 1020~1060℃急冷 – – – 38以下 析出硬化熱処理 H900 S処理後 470~490℃空冷 1310以上 1175以上 10以上 40以上 H1025 S処理後 540~560℃空冷 1070以上 1000以上 12以上 35以上 H1075 S処理後 570~590℃空冷 1000以上 860以上 13以上 31以上 H1150 S処理後 610~630℃空冷 930以上 725以上 16以上 28以上 4.2 熱処理規格 table.5 種類 熱処理 記号 熱処理 引張強さ N/mm2 耐力 N/mm2 伸び % 硬度 HRC 固溶化熱処理 S 1050℃/WQ 1137 657 17 31 析出硬化熱処理 H900 S処理後 480℃/AC 1392 1245 17 42 H1025 S処理後 550℃/AC 1137 1049 19 36 H1075 S処理後 580℃/AC 1088 960 20 32 H1150 S処理後 620℃/AC 1029 813 23 29 機械的性質は一例です。 5.時効硬化曲線(時効処理時間と硬度の関係) Fig.1時効硬化熱処理時間と硬度の関係 6.低温衝撃値 table.6 試験温度(℃) シャルピー衝撃値 (J/cm2) 2mmVノッチ H900 H1025 H1150 24 29.4 98 127.4 0 24.5 88.2 127.4 -40 10.78 53.9 102.9 -72 10.78 27.44 42.14 -196 2.94 6.86 8.82 7.顕微鏡組織 溶体化熱処理 (1050℃/WQ) 時効硬化熱処理(480℃/AC) Photo 1顕微鏡組織(200倍) 8.耐食性 8.1 硬度と孔食電位の関係 シリコロイXVIおよびシリコロイA2は、硬度と耐食性のバランスに優れています。 硬度と孔食電位の関係 8.2 耐孔食性(3.5%NaCl) 耐食性の一例 Fig.7孔食電位グラフ 8.3 各腐食液に対する耐食性 単位:g/m2/hr table.7 腐食液 SUS630 SUS410 SUS430 SUS431 SUS304 固溶化 熱処理 時効硬化 熱処理 焼入 焼なまし 焼入 固溶化 熱処理 10%H2SO4、室温、48hour 4.6 6.3 22.2 76.5 91.7 0.05 40%HNO3、沸騰、8hour 0.26 0.30 0.97 2.3 0.33 0.10 10%HCl、30℃、48hour 0.50 0.50 17.2 34.6 20.1 2.3 80%CH3COOH、沸騰、8hour 0.81 0.13 41.8 70.1 12.0 0.3 関連情報 腐食液依存性 機械的性質比較表 硬度と靭性の関係 耐食性比較表 ステンレスの熱処理寸法変化 ピンオンディスクまとめ 関連事例 関連事例はありません。 関連Q&A 関連Q&Aはありません。 関連タグ SUS630, ステンレス, 時効硬化, 材質, 析出硬化, 特殊鋼, 硬度, 耐食性, 腐食性 ページランキング 硬度換算表 SUS440C SUS420J2 SUS630 ステンレスの熱処理寸法変化