特性

高温腐食試験
Oxidation Resistance

高温腐食試験の内容および、結果を掲載しています。

1. 試験方法

焼却炉内に試験片を設置し一定期間稼動した後に取り外し、各材質の劣化状況を調査した。

  • 試験温度:850℃
  • 試験時間:
    1. シリコロイA2、シリコロイD:1050時間
    2. インコネル601、インコネル625、ハステロイC:350時間

2. 試験材質と化学成分の一例

(wt%)

table.1
成分 C Si Mn Cu Ni

Cr

Mo Nb+Ta Co Al Fe
シリコロイA2 0.014 3.50 1.00 1.10 6.50 10.90 0.40 0.30
シリコロイD 0.016 3.90 1.10 14.20 17.70 1.00 1.3
インコネル601 ≤0.10 ≤0.50 ≤1.0 ≤1.0 58.0~
63.0
21.0~
25.0
1.0
~1.7
インコネル625 ≤0.10 ≤0.50 ≤0.50 ≥58.0 20.0~
23.0
8.0~
10.0
3.15~
4.15
≤0.10 ≤0.40 Ti≤0.40 ≤5.0
ハステロイC22 0.010 0.08 0.50 56.0 22.0 13.00 2.5 W:3.0
V:0.35
3.0

3. 試験後の外観

シリコロイA2,シリコロイD (長さ方向に縦に2分割した材料を溶接)

Photo 1シリコロイA2,シリコロイD
(長さ方向に縦に2分割した材料を溶接)

インコネル601,インコネル625,ハステロイC22 (長さ方向に横に3分割した材料を溶接)

Photo 2インコネル601,インコネル625,ハステロイC22
(長さ方向に横に3分割した材料を溶接)

4. 断面ミクロ組織観察

断面ミクロ組織観察 1
photo.3
断面ミクロ組織観察2
photo.4
断面ミクロ組織観察3
photo.5
断面ミクロ組織観察4
photo.6
断面ミクロ組織観察5
photo.7

5. スケール厚さおよび母材変質層厚さ

スケール厚さおよび母材変質層厚さ
Fig.1スケール厚さおよび母材変質層厚さ
スケール厚さおよび母材変質層厚さ
Fig.2スケール厚さおよび母材変質層厚さ

6. EPMAによる面分析結果

table.2
材質 スケール部検出元素 母材変質部編在元素
厚さ(μm) 元素 厚さ(μm) 元素
シリコロイ
A2(3)
200 Ni Cr Si   O         S 38          
シリコロイ
D(3)
70   Cr Si   O   Cl Al   S 0   S      
インコネル
601(2)
200 Ni Cr   Fe O     Al     500 Cr S O Al  
インコネル
625(2)
110 Ni Cr   Fe O Nb     Mo   175 Cr   O Al Nb
ハステロイ
C22(2)
140 Ni Cr   Fe O       Mo   50 Cr S      

7. 考察

  1. 断面ミクロ組織観察結果より、シリコロイの高温腐食による劣化度はシリコロイA2よりもシリコロイDの方が少ないことが分かります。
    またシリコロイDはインコネル601、インコネル625、ハステロイCよりも良好な結果となりました。
    (*試験時間 シリコロイA2シリコロイD:1050時間、インコネル601、インコネル625、ハステロイC:350時間)
  2. EPMAによる面分析結果より、シリコロイと高合金の腐食の形態が異なることが分かります。   インコネル601、インコネル625、ハステロイCはCr2O3皮膜の形成、インコネル601はAlの酸化皮膜の形成が考えられます。
    シリコロイA2、シリコロイDはCr2O3皮膜の下にSi系の皮膜形成によりCr2O3皮膜の剥離が容易に行われず、酸化を抑制しているものと推測されます。
    特にシリコロイDはオーステナイト系ステンレスであり、Siが多く含有されていること、また低炭素であることが有効に働いているものと想定されます。また高温での合金元素の特徴を以下に示します。
    • C:Cは400℃以上の高温環境下でCrと結合し、結晶粒界にCr炭化物を析出する。
    • Cr:Crは腐食性の付着灰に対する溶解度の小さい保護的な酸化皮膜であるCr2O3てら合金表面に生成し、腐食性の付着灰から保護する作用がある。
    • Si:Siは非晶質のFe2Si4、SiO2皮膜をCr2O3の下に形成しスケールの固着性を良くする関係上、酸化皮膜の剥離が容易に行われないため高温酸化に有効である。
    • Nb:Nbは炭化物を形成しやすく、合金中のCを固定してCr炭化物の析出を抑制し、高温強度の劣化を防ぐ作用がある。

7. EPMAによる面分析結果の詳細

EPMAによる面分析結果の詳細1
photo.8
EPMAによる面分析結果の詳細2
photo.9
EPMAによる面分析結果の詳細3
photo.10
EPMAによる面分析結果の詳細4
photo.11
EPMAによる面分析結果の詳細5
photo.12