熱処理

熱処理変形:真空固溶化熱処理の変形量
Shape Distortion of Solution Treatment

時効硬化熱処理を大気熱処理炉で実施した場合、テンパーカラー(薄い酸化スケール層)の付着は否めません。

一般的に長尺品の固溶化熱処理は1000℃を超える高温からの急冷するため変形しやすい。大気熱処理の場合は、冷却方法が水冷や油冷のため長さが直径の10倍までは変形しにくいと考えられている。

今回、析出硬化型ステンレスの再鍛造品や再固溶化を実施する場合、できるだけ変形量を少なくする方法を検討しましたのでご報告致します。

1. 試験片

  1. 材質:シリコロイA2、シリコロイXVI、SUS630

2. 試験方法

  1. 試験片:丸棒材の長尺品
  2. 真空固溶化熱処理:1050℃/ガス冷却

    *真空固溶化熱処理は冷却方法がガス冷却のため、全体が均一に冷却され冷却速度が水冷や油冷よりも遅いのが特徴。

3. 試験結果

  1. 直径が細いほど、また長さが長いほど、変形量が多い。
  2. 設置方法を縦置きにすることで、変形量を抑制できる。

    *真空炉の縦置きは長さの制限がありますのでご注意下さい。

table.1
材質 表面状態 設置方法 熱処条件 形状 中心部変形量
mm
シリコロイA2 ピーリング材 横置き 1050℃×1hr/ガス冷 φ10.1mm×350mm 0.45
ピーリング材 横置き 1050℃×1hr/ガス冷 φ15.1mm×350mm 0.30
ピーリング材 横置き 1050℃×1hr/ガス冷 φ15.1mm×495mm 0.90
ピーリング材 横置き 1050℃×1hr/ガス冷 φ15.1mm×495mm 1.95
シリコロイA2 鍛造黒皮材 縦置き 1050℃×1.5hr/ガス冷 φ17.6mm×405mm 0.20
シリコロイXVI 鍛造黒皮材 縦置き 1050℃×1.5hr/ガス冷 φ17.6mm×405mm 0.25
鍛造黒皮材 縦置き 1050℃×1.5hr/ガス冷 φ17.6mm×405mm 0.45
SUS630 ピーリング材 縦置き 1050℃×1.5hr/ガス冷 φ16.1mm×400mm 0.1以下

4. 試験後の外観

  熱処理後の外観
table.2試験後の外観