鋼種
SKD61
SKD61
合金工具鋼の一種で、炭素工具鋼にタングステン、モリブデン、クロム、バナジウム等を添加しています。SKD61は耐熱性・耐ヒートショック性を有し熱間金型用として多く使用されています。
1. 化学成分の一例
成分 | C | Si | Mn | P | S | Cr |
Mo | V | Fe |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
規格 | 0.32-0.42 | 0.80-1.20 | ≤0.50 | ≤0.030 | ≤0.030 | 4.50-5.50 | 1.00-1.50 | 0.80-1.20 | Bal. |
成績例 | 0.37 | 0.93 | 0.46 | 0.020 | 0.020 | 5.22 | 1.21 | 0.80 |
- 化学成分は一例です。
2.熱処理
2.1 熱処理の一例:焼なまし
(wt%)
分類 | 熱処理 | 硬度(HB) | |
---|---|---|---|
規格 | 焼なまし | 焼なまし:820-870℃徐冷 | 229以下 |
一例 | 焼なまし | 850℃徐冷 | 187 |
- 硬度は一例です。
2.2 熱処理の一例:焼入・焼戻し
(wt%)
分類 | 熱処理 | 硬度(HRC) | |
---|---|---|---|
規格 | 焼入れ・焼戻し | 焼入れ:1000-1050℃空冷 焼戻し:550-650℃空冷 |
53以下 |
一例 | 焼入れ・焼戻し | 焼入れ:1030℃空冷 焼戻し:560℃空冷 |
53 |
- 硬度は一例です。
3.顕微鏡組織
4.耐食性
4.1 塩酸腐食試験(5.0%HCl)
4.2 硫酸腐食試験(5.0%H2SO4)
4.3 硝酸腐食試験(5.0%HNO3)
4.4 200ppm次亜塩素酸ナトリウム腐食試験(200ppmNaClO)
4.5 10000ppm次亜塩素酸ナトリウム腐食試験(10000ppmNaClO)
5.耐熱衝撃性(耐ヒートチェック性)
6.SKD61をご使用の方へのご提案
SKD61製品の加工プロセスの簡略化
SKD61は焼入れ・焼戻しを行うことでHRC53以下の高硬度を達成しますが、熱処理での寸法変化や歪みの発生を伴います。 析出硬化系ステンレスのシリコロイA2およびシリコロイXVIは、時効硬化熱処理(450~480℃/空冷)で高硬度を達成できるため、熱処理での寸法変化や歪みが非常に少ないのが特徴です。特に精密部品で有効な例が多いです。
時効硬化熱処理後の参考硬度 シリコロイA2:HRC50±2、シリコロイXVI:HRC56±2
耐食性と高硬度の両立
近年、腐食環境がより一層厳しくなってきていますが、SKD61で耐食性を向上させたい方にはシリコロイA2およびシリコロイXVIが有効です。
高温での使用
シリコロイA2は耐ヒートチェック性に優れており、連続鋳造用ローラーとしての実績は多数あります。
連続鋳造用ローラーはビレットなどの鉄鋼半製品を成形する装置の主要部品で、溶融した鉄が直接ローラーに触れ、また水冷を行うため、熱と冷却の繰り返しの環境で非常に過酷な環境です。シリコロイA2は従来材と比較してローラーの長寿命化に貢献しています。
*注意点:シリコロイA2の熱処理は耐ヒートチェック性を目的として過時効処理(OAG:650℃/AC)を採用しています。
また高温硬度が必要な場合は、シリコロイA2よりもシリコロイXVIの方が有効です(500℃の高温硬度はHV500程度です)。